賞味期限の年月表示のメリットとは?

全3回の連載記事です。

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メリット①:食品ロス削減(フードロス削減)

食品ロスを発生させる要因の一つに、長年の商習慣による、「日付の逆転問題」が挙げられます。

食品メーカーが小売店へ商品を納入する際、「以前納品した賞味期限より古い賞味期限のものを納品すること」は、基本的にできません。

賞味期限が2021年1月16日の商品を納品したら、2021年1月15日の商品を納品することは出来なくなるということです。

そもそも先入先出が徹底されていれば、日付の逆転など発生しないだろうと思われるかもしれませんが、例えば物流拠点が複数あって拠点ごとの売れ行きに急な偏りが生じた場合や、古くなったものを返品できる契約がある場合なんかには容易に発生します。

在庫の賞味期限日は逆転したり偏ったりしても、納品の賞味期限日は逆転できませんので、それを回避するためには在庫を処分したり遠方の拠点から運んできたりする必要性が出てきます。また、すぐ近くの拠点に在庫が余っていても納品できない事態も発生します。

これが「食品ロスや、エネルギーの無駄を発生させる」として、問題視されているのです。

商流によっては実態はもっと複雑で、メーカーが直接小売店に納品する場合はもちろん、メーカーから卸問屋へ納品する際にも、卸問屋から小売店への際も、各種物流拠点へ納品する際、物流拠点から店舗へ納品する際にも基本的にはこのルールが適用され、日付の逆転はNGとされます。

このルール自体が諸悪の根源のように語られることがあります。
ただ、筆者はメーカーの人間ですが、このルール自体は合理的だと思っています。日付の逆転が許容されればメーカーは楽ですが、今度は物流の川下が困るだけです。食品メーカーといっても、一般的には更に川上には原料メーカーや原料商社がありますが、仮にそこから賞味期限がバラバラの原料が入ってきたら、やはり困ってしまうのと同じです。

なお、このルールについて、不文律や暗黙の了解といった表現を散見します。法律で決まっている訳ではないというニュアンスで書かれた表現だと思われますが、基本的には売買基本契約書などには盛り込まれます。


さて、この「日付の逆転問題」について、賞味期限が「年月表示」になると、どうなるでしょうか。

細かく分かれていた賞味期限が月まとめになるため、次のような効果があると期待されています。

今までは数日違いで納品できなかった賞味期限のものが「同じ賞味期限」になり、納品できるようになる。その結果、行き場を無くして廃棄される商品が減り、「食品ロス」が削減される。


また、食品ロスを発生させる要因としては、「日付の逆転問題」のほかにも、店舗において「新しい日付のものが消費者に選ばれ古いものが売れ残る」といった点も挙げられます。

これについても、年月表示化して「賞味期限が同じ」になれば発生しにくく、「食品ロス削減」につながると考えられています。

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メリット②:利益改善・各種コスト削減

賞味期限の年月表示化は、食品ロス削減という社会的な意義だけではなく、事業者にとっての経済的なメリットをも発生させると考えられています。


利益改善効果

まず、メリット①で挙げた「日付逆転問題の緩和」や「売れ残りの減少」による「食品ロス削減」は、寄付によって最終的なロスを削減することを意味するのではなく、その前段階の「販売」によってロスを削減できるものです。
したがって、正規の価格で売れるかどうかは別としても、多少なりとも利益(売上)の改善に貢献するものと考えられます。

コスト削減効果

賞味期限の年月表示化は、加工食品のサプライチェーンの各段階において、業務効率化による「コスト削減効果」をもたらすことが期待されています。

ただし、デメリットの項にて後述しますが、「製品への印字を年月表示化」するだけでなく、「在庫管理」についても「日別」から「月別」に切り替えないと、年月表示化による業務効率化の恩恵は受けられません。

メーカー・倉庫・配送

・賞味期限の日付ごとに細かく分けていた保管場所を月まとめにできるため、スペースの効率化が図れます。
・ピッキング作業が単純化し、効率化につながります。
・物流においても、積み込みや荷下ろし作業の省力化、積載効率の向上などのメリットが生まれます。

小売

・日付順に並べる必要がなくなるため、品出し作業が楽になります。
・同じく、日々の賞味期限を確認する作業も軽減されます。

全3回の連載記事です。


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