黒糖はそのまま食べるもの?デメリットはある?

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はじめに

私事ですが、先日、身内がおやつとして黒糖をそのまま食べていました。

理由を聞いたところ「身体によさそう」だからというもので、しかも「別に味が好きな訳ではない」と言うのです。

単に好きで食べているのであれば特に言うことは無いのですが、理由が理由だけに、一応は食品業界の品質部門に従事する身として、色々な角度から検証してみることにしました。

目次のクリックやタップでその項目までジャンプできますので、興味のある項目だけでも読んでもらえたらと思います。※モバイル表示の場合、サイドバー内にあります。

なお、結論を簡単に言うと、ミネラル摂取を期待するなら「有り」、カロリーを控えるダイエット目的なら「無し」です。

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「黒糖(黒砂糖)」の定義について

まず、「黒糖(黒砂糖)とは何なのか?」について簡単に説明します。

スーパー等で販売される食品には、次のような「食品表示」がなされています。

名称黒糖
原材料名さとうきび(○○産)
内容量
賞味期限
保存方法
製造者

この食品表示の「名称」の部分に、「黒糖(黒砂糖)」と表示するための定義・条件は、「食品表示基準Q&A」にて次のように定められています。

” 黒糖又は黒砂糖とは、さとうきびの搾り汁に中和、沈殿等による不純物の除去を行い、煮沸による濃縮を行った後、糖みつ分の分離等の加工を行わずに、冷却して製造した砂糖で、固形又は粉末状のものをいいます。”

なんとなく、黒糖が固形、黒砂糖が粉末のようなイメージがある方も少なくないんじゃないかと思いますが、法的にこれらの違いはないんですね。(以降、黒糖の表記に統一します)

また、黒糖に粗糖等を加えて加工したものは、単に「黒糖」の名称表示はできませんが、純粋な「黒糖」ではないことが分かる「加工黒糖」などの表示は可能です。

当然ですが、黒糖を全く使用していない砂糖に「○○黒糖」、「黒糖○○」といった名称は使用できません。

【関連ページ】「名称」の表示について|食品表示の作成方法と注意点【一般用加工食品】

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精製糖(上白糖やグラニュー糖など)との違い

黒糖と精製糖の違いを知るために、もう一度、黒糖の定義を確認してみましょう。

” 黒糖又は黒砂糖とは、さとうきびの搾り汁に中和、沈殿等による不純物の除去を行い、煮沸による濃縮を行った後、糖みつ分の分離等の加工を行わずに、冷却して製造した砂糖で、固形又は粉末状のものをいいます。”

重要なのは「糖みつ分の分離等の加工を行わずに」の部分です。

「黒糖」は、糖みつ(糖蜜)の分離を行わない「含蜜糖」に分類される砂糖です。

「含蜜糖」に対して、上白糖やグラニュー糖などの精製糖は「分蜜糖」に分類されます。

黒糖の定義の一文の中に「中和、沈殿等による不純物の除去」とありますが、これはあくまで異物除去工程であって、糖みつの分離が行われませんので、サトウキビの絞り汁に含まれるミネラル等の成分は多くがそのまま残ることになります。

これが、精製糖と比較して、一般に黒糖がミネラル豊富と呼ばれる理由です。

栄養成分の比較

さて、一般にミネラル豊富と言われる黒糖ですが、私も一応は食品表示を専門とする身です(上級食品表示診断士)。一般論を鵜呑みにする訳にもまいりませんので、数値を用いて検証していきたいと思います。

基本成分の比較(黒糖・上白糖・グラニュー糖)

項目単位黒糖上白糖グラニュー糖
エネルギーkcal356384387
たんぱく質g1.700
脂質gTr00
炭水化物g90.399.3100
 -糖質g90.399.3100
 -食物繊維g000
食塩相当量g0.100
出典:日本食品標準成分表2015年版(7訂)
※Tr=微量:最⼩記載量に達していないもの

水分・ミネラルの比較(黒糖・上白糖・グラニュー糖)

項目単位黒糖上白糖グラニュー糖
水分g4.40.7Tr
灰分g3.600
ナトリウムmg271Tr
カリウムmg11002Tr
カルシウムmg2401Tr
マグネシウムmg31Tr0
リンmg31Tr0
mg4.7TrTr
亜鉛mg0.50Tr
mg0.240.010
マンガンmg0.9300
ヨウ素μg1500
セレンμg400
クロムμg1300
モリブデンμg900
出典:日本食品標準成分表2015年版(7訂)
※Tr=微量(最⼩記載量に達していないもの)

数値で比較すると、上白糖やグラニュー糖にはごく微量しか含まれていないミネラル各種が、黒糖に含まれていそうなことが分かります。

しかしながら、精製糖である上白糖やグラニュー糖に比べて、黒糖のミネラルの数値が高いのは、ある意味で当然と言えば当然のことです。

実は、一般に販売される食品について、栄養成分が「豊富」と表示するためには、法令(食品表示基準)にて満たすべき基準値が定められています(多い、たっぷり等も同様です)。

ネット上では割と無差別に「豊富」「たっぷり」などの用語が使用されている印象ですが、実際の商品パッケージに記載しようとする場合は、この基準値を守らないと法令違反となるんですね。

次は、この基準値と、黒糖の数値を比較してみます。

表示基準値との照合

栄養成分単位黒糖の数値高い旨の基準値
カリウムmg1100840
カルシウムmg240204
mg4.72.04

食品表示基準において豊富やたっぷり等の「⾼い旨の表⽰」をするための基準値と、黒糖の数値を照らし合わせたところ、「カリウム」・「カルシウム」・「鉄」について、基準値以上ということが分かりました。

よって、一般に黒糖は次のことが言えると考えられます。

  • カリウム豊富
  • カルシウム豊富
  • 豊富

※ちなみにですが、この基準値を満たしたとしても、「高カルシウム黒糖」のような表示は適当でないことが消費者庁より示されています。このような表示方法では、他の黒糖と比べて特別にカルシウムが高いかのような誤解を招くためです。「黒糖は高カルシウム食品です。」のような表示が望ましいとされています。

カロリーや糖質について

黒糖がミネラル豊富なことは分かりましたが、その他の成分やカロリーについてはどうでしょうか。

今一度、黒糖と精製糖の成分等を抜粋して見てみます。

項目単位黒糖上白糖グラニュー糖
エネルギーkcal356384387
炭水化物g90.399.3100
 -糖質g90.399.3100
出典:日本食品標準成分表2015年版(7訂)

黒糖は、カロリーや糖質の数値が上白糖やグラニュー糖よりも低いため、一見、カロリー制限や糖質制限に向くようにも思えます。

とは言っても、あくまでその差は「一割程度」に過ぎません。

黒糖はミネラルや水分も含まれる分だけ、精製糖に比べてカロリーや糖質が低いのは確かですが、その他の食品と比べれば、黒糖も基本的には砂糖の塊です。

もちろん、今まで上白糖やグラニュー糖を使用していた場面で、それを黒糖に置き換えれば、カロリー制限や糖質制限に多少の効果は期待できるかと思います。

しかしながら「おやつ」として「そのまま食べる」ことを考えると、他の食品と比べる必要があります。

例として、黒糖とシュークリームの栄養成分を比較した表が以下です。

項目単位黒糖シュークリーム
エネルギーkcal356228
たんぱく質g1.76
脂質gTr11.3
炭水化物g90.325.6
 -糖質g90.325.3
 -食物繊維g00.3
食塩相当量g0.10.2
出典:日本食品標準成分表2015年版(7訂)
※Tr=微量(最⼩記載量に達していないもの)

水分をほとんど含まない砂糖類に対して、シュークリームのような水分の多い食品はカロリーが大幅に低くなります。

「食べやすさ」や「好き嫌い」、「腹持ち」などの要因も関係しますので一概には言えませんが、カロリー制限を目的とした場合、おやつに黒糖をそのまま食べるのは、あまり適切とは言えないと考えられます。言うまでもないですが、糖質制限ダイエットにも向きません。

まとめ

黒糖はミネラル(カリウム・カルシウム・鉄分)が豊富な食品です。

ただ、精製糖と比べればカロリーや糖質の数値は低いとはいえ、一般的な食品と比べればほとんど砂糖の塊であることに変わりはありません。

おやつとして黒糖をそのまま食べるのは、カリウム・カルシウム・鉄分等の摂取を期待するのであればともかく、カロリー制限などのダイエット目的であれば適切ではないと考えられます。

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