ラベルレスボトルとは?|扱う際の注意点・食品表示上の問題点も解説

食品パッケージの表示内容を考えたりチェックしたりする仕事をしているヤマケンと申します(上級食品表示診断士)。

このページでは、最近話題の「ラベルレスボトル」について、注意点や問題点も交えて解説・考察していきます。

スポンサーリンク

ラベルレスボトルとは?

「ラベルレスボトル」とは、ペットボトルのラベルを無くした商品(主に飲料品)のことです。

バラ売りNGの「ケース販売専用商品」とすることで、原材料名や栄養成分などの情報は「外箱の段ボール」に表示するだけで済みます。

それによって、ペットボトル本体に表示ラベル(シュリンクフィルム)を付ける必要がなくなったんですね。

「ケース販売専用商品」ということで、ラベルレスボトルの商品は、基本的には通信販売限定で販売されています。

そのため、特にラベルレス化が進んでいるのは、ネット通販サイトの主力商品である「水・お茶・炭酸水」といったカテゴリの商品です。
関連ページ:ラベルレスボトル一覧【種類別・メーカー別】

ラベルレスボトルは、通常品より価格が安いことに加えて、ラベル分別が不要という手軽さ、プラスチックごみ削減意識の高まり、更にコロナ禍での巣篭り需要も追い風となり、2020年の春から夏にかけてグッとメジャーな存在になりました。

また、メーカー側の事情を言うと、2020年4月の法改正(資源有効利用促進法の省令一部改正)でラベルレスボトルを商品化しやすくなったことも、ラベルレスの商品数が拡大した要因の一つです。

さて、このページでは次のことを解説・考察していきます。

このページの内容

① ラベルレスボトルの段ボール箱には何が書いてあるのかレビュー。
② その段ボール表示と、通常のラベル有りボトルの表示との比較。
③ ラベルレスボトルを購入した人が気を付けるべき注意点
④ 段ボール箱表示の(メーカー側の)問題点。
⑤ 同様の商品はペットボトル以外にも拡大するのか?

「目次(PC:画面左/モバイル:サイドバー)」から任意の項目にジャンプすることもできます。興味のある箇所だけでも読んでいただければ幸いです。

なお、③の「注意点」が最も重要ですので、結論を先に言ってしまいます。

それはラベルレスボトルを「町内のお祭り・セミナーなどでバラで配るのは控えたほうがよい」ということです。

食品表示法は「不特定又は多数の者に対する譲渡」についても食品表示を求めており、ラベルレスボトルの譲渡によって表示義務違反になってしまう恐れがあるからです。

スポンサーリンク

ラベルレスボトルの定義と分類(タイプ)について

タイプAタイプBタイプCタイプ
概要完全ラベルレスタックシール付
ラベルレス
ラベルレス風
画像

ラベルレスボトルには3つのタイプがあります。

ラベルレスボトルの注意点やメリット・デメリットなどを語る際に、どのタイプなのかを明確にしておかないと誤解が生じますので、先にこの「ラベルレスのタイプ」の話をします。

Aタイプは、「完全ラベルレス」で、ボトルとキャップ以外に何もついていないものです。

Bタイプの「タックシール付きラベルレス」の多くは、2020年3月までに発売された商品です。

2020年4月の法改正(資源有効利用促進法の省令一部改正)によって「いわゆるPETマーク」を表示したタックシールが不要になり、Aタイプの「完全ラベルレス」の実現が可能になりました。

ただし、それ以前に既に販売がスタートしている商品に関しては、完全ラベルレスに移行するにしても設備や資材の切り替え等にコストがかかることもあって、現役で「タックシール付き」の商品も残っています。

Cタイプは、便宜上「ラベルレス風」とキャッチ―な名前をつけてみましたが、原材料や保存方法といった食品表示が記載された「首掛式ラベル」がついている商品のことです。

分別の手間が減る等のメリットはあると思いますが、コンビニ等でも販売可能なタイプの商品で、法律的には一般的な商品と大きな違いはありません。

なお、サントリー「伊右衛門」は、2020年4月と8月にCタイプの「首掛式ラベル付き商品」を数量限定で店頭販売したのちニュースリリース、2020年11月には通販チャネルを対象としたAタイプの「完全ラベルレス商品」を発売していますニュースリリース

※各メーカーのラベルレス商品については、次のページで一覧形式でまとめています。
【関連ページ】:ラベルレスボトル一覧【種類別・メーカー別】


以降、単に「ラベルレス」や「ラベルレスボトル」と言った場合は、AタイプまたはBタイプのものを指します。

スポンサーリンク

段ボール箱に何が書いてある?

十六茶の箱表示

段ボール上面(ラベルレス十六茶)
段ボール長面①(ラベルレス十六茶)
段ボール長面②(ラベルレス十六茶)
段ボール短面①(ラベルレス十六茶)
段ボール短面②(ラベルレス十六茶)

まずは、「アサヒ飲料さんの十六茶」から見ていきます。

段ボール上面

ラベルレスの十六茶の段ボール上面には、「ケース販売専用商品・お店で開封しないでください」といった「注意喚起表示」や、「原材料名・栄養成分」といった「食品表示」が記載されています。

段ボール長面

段ボール長面には、やはり「注意喚起表示」が記載されているほか、「賞味期限」と「製造所固有記号」が記載されています。

段ボール短面

段ボール短面には、上面と同じく「注意喚起表示」「食品表示」、更に「段ボールを使った輪なげのあそび方」が記載されています。

爽健美茶の箱表示

段ボール上面(ラベルレス爽健美茶)
段ボール長面①(ラベルレス爽健美茶)
段ボール長面②(ラベルレス爽健美茶)
段ボール短面①(ラベルレス爽健美茶)
段ボール短面②(ラベルレス爽健美茶)

段ボール上面

ラベルレスの爽健美茶の段ボール上面には、「原材料名・栄養成分」といった「食品表示」や、次のような「注意喚起表示」が記載されています。

ケース内のペットボトルにはラベルや表示がありませんので下記内容に注意して取り扱いをお願いします。
・ペットボトル製品はこのケースで保管してください。
・ペットボトル製品単独での譲渡には十分にご注意ください。

この「ペットボトル製品単独での譲渡」に関する注意点については、後述しています。

段ボール長面

段ボール長面には、やはり「ケース販売専用」と記載されているほか、「賞味期限」と「製造所固有記号」が記載されています。

段ボール短面

段ボール短面には、「ケース販売専用」という記載や、商品名等の記載がありました。

アクエリアスの箱表示

段ボール上面(ラベルレス・アクエリアス)
段ボール長面①(ラベルレス・アクエリアス)
段ボール長面②(ラベルレス・アクエリアス)
段ボール短面①(ラベルレス・アクエリアス)
段ボール短面②(ラベルレス・アクエリアス)

「段ボール上面」の画像を見てください。

「送り状(荷物を送る際にお届け先などを記入する紙)」を剥がした跡が分かりますでしょうか。

この「送り状によって文字が隠れ、更にうまく剥がせない恐れもある」ことについては、問題点として後述しています。

なお、段ボール表示内容そのものは、同じコカ・コーラさんの商品である爽健美茶と「ほぼ同じ構成」でした。(もちろん原材料等は異なります。)

ラベル有りボトルとの食品表示の比較

次は、ラベルレスボトルの段ボール箱に記載された「食品表示(原材料名・栄養成分など)」を、スーパーなどで販売されている「ラベル有りボトル」の食品表示と比較して、違いを見てみたいと思います。

十六茶の比較

項目段ボール箱の表示通常ラベルの表示
名称清涼飲料水(十六茶)清涼飲料水(十六茶)
原材料名(省略)(省略)
内容量630ml×24本630ml
賞味期限ケース側面上段または左に記載キャップに記載
保存方法高温、直射日光をさけ
保存してください。
高温、直射日光をさけ
保存してください。
製造者アサヒ飲料株式会社
東京都墨田区吾妻橋1-23-1
アサヒ飲料株式会社
東京都墨田区吾妻橋1-23-1

中身が同じですので、当然ながら原材料ほか表示内容もほぼ同じですが、「内容量」については違いが見られます。

「内容量:630ml×24本」というのは、「ケース単位の製品」であることを意味しています。

例として、「大袋に入っていて、更に一つ一つが『個包装』されているお菓子」を思い浮かべてみてください。

「ラベルレスボトル」は、いわばお菓子の「個包装」に当たります。

そして、「段ボール箱」が「外側の袋」に相当するわけですね。

「ケース販売専用商品」とすることによって、「個包装タイプの大袋お菓子」と同様の商品となり、「計量法」や「食品表示法」の表示義務を、「段ボール箱への表示のみ」でクリアしているんですね。

※ラベルレスボトル商品を「袋入りのお菓子」に例えましたが、「資源有効利用促進法」においては両者の扱いは異なります。詳しくはこちらへ(資源有効利用促進法の省令一部改正)。

爽健美茶の比較

項目段ボール箱の表示通常ラベルの表示
品名爽健美茶(清涼飲料水)爽健美茶(清涼飲料水)
原材料名(省略)(省略)
内容量500ml×24600ml
賞味期限側面に記載キャップに記載
保存方法高温・直射日光をさけて
ください
高温・直射日光をさけて
ください
販売者コカ・コーラカスタマー
マーケティング(株)
東京都港区六本木6-2-31
コカ・コーラカスタマー
マーケティング(株)
東京都港区六本木6-2-31

爽健美茶についても、「内容量」について違いが見られます。

爽健美茶は、「ボトル単体の内容量そのもの」も通常品とは異なるようです。

公式サイトの爽健美茶のブランドページを見ても、ラベル有り商品のラインナップの中に、ラベルレスボトルと同じ「500ml」はありませんでした。

アクエリアスの比較

項目段ボール箱の表示通常ラベルの表示
品名清涼飲料水清涼飲料水
原材料名(省略)(省略)
内容量500ml×24500ml
賞味期限側面に記載キャップに記載
保存方法高温・直射日光をさけて
ください
高温・直射日光をさけて
ください
販売者コカ・コーラカスタマー
マーケティング(株)
東京都港区六本木6-2-31
コカ・コーラカスタマー
マーケティング(株)
東京都港区六本木6-2-31
製造所北海道コカ・コーラ
プロダクツ(株)札幌工場
北海道札幌市清田区清田

1条1丁目2番1号

アクエリアスでは、「内容量」のほか、製造所の表示方法にも違いが見られました。

ラベル有り商品では「製造所固有記号」を使用しているのに対して、ラベルレスボトルの段ボールには「製造所を直接表示」しているようです。

ラベルレスボトルの注意点(購入者サイド)

バラで売るのはNG、不特定または多数への譲渡もNG

ラベルレスボトルについて、通販で購入した人が気をつけるべき注意点があります。

結論を先にいうと、それは「ラベルレスボトルを町内のお祭り・セミナーなどで配るのは控えたほうがよい」ということです。

では、「なぜ配るのを控えるべきなのか」について解説していきます。

前述のとおり、ラベルレスボトルは、段ボール箱に食品表示がなされている「段ボール単位の商品」ですので、ペットボトル製品自体には何の表示もありません。

メーカーによって文面は異なりますが、段ボール箱にも「ケース販売専用商品」「お店で開封しないでください。」といった注意書きがなされています。

それもあって、ラベルレスボトルを実際にバラで売ろうと考える人はそう多くないと思われます。

何となく「バラ売りはまずそうだな」ということはイメージできるんじゃないでしょうか。

さて、ここからが問題なのですが、「食品表示法」は、「販売(不特定又は多数の者に対する販売以外の譲渡を含む。)の用に供する食品」に関する表示について、基準の策定や必要な事項を定めた法律です。

要するに、「不特定又は多数の者に譲渡」をする場合にも、食品表示が必要になるということです。

したがって、特定かつ少数の者、つまり知り合いに渡す程度であれば問題とされませんが、「セミナー、町内会、運動会」などで不特定の人や多数の人に配ってしまうと問題になります。

完全クローズドのイベントであればまだしも(それでも多数ならアウトですが)、誰でも参加できるようなイベントだと「不特定」の条件を満たしてしまうでしょう。

ラベルレスボトルは余計なゴミが出ずに分別の手間がかからないことから、主催者側からすると、むしろイベントのような場でこそ配りたくなるかもしれませんが、控えるようにしてください。

法的な問題を抜きにしても、例えば「もし牛乳アレルギーの人が『乳成分が含まれるラベルボトル飲料』を知らずに飲んでしまったら・・・」と考えると、表示の無いペットボトルを不特定多数に配るべきでない理由がイメージしやすいかもしれません。

実は「食品表示法」が不特定又は多数への譲渡について食品表示を求めているのも、そのような「安全性に関する理由」からです。

※そうそういないとは思いますが、当然ながらケース単位で譲渡するのは問題ありません。

表示責任を問われるのは誰か?

さて、仮にラベルレスボトルを販売、あるいは不特定又は多数にバラで譲渡した場合に、保健所や消費者庁から表示責任を問われるのは誰になるでしょうか?

それが「実際にバラで譲渡した人なのか、あるいは大元の飲料メーカーなのか」について、今のところ前例はないと思われますが、次のQ&Aが参考になります。

(加工-300)業務用加工食品として販売したにもかかわらず、購入した業者が直接消費者に販売して表示に不備が生じた場合、製造者が表示責任を問われますか。
(答)
明らかに業務用として販売することを想定した商品について、製造者が業務用加工食品として販売するものであって、一般用加工食品としての義務表示を満たしていないことを取引時に書面等で明確に示しているにもかかわらず、購入する販売者が一般用に販売する場合、直接消費者に販売する業者が表示責任者として一般用加工食品としての表示を行う必要があります。

引用元:食品表示基準Q&A

このQ&Aは、「メーカー→中間業者→消費者」という流れの取引を想定したものです。

前提として、業務用加工食品と一般用加工食品では、表示すべき内容が違うんですね。

よって「一般用加工食品の義務表示を満たしていないことを明確に示したうえで、メーカーが中間業者に販売した業務用加工食品」については、それを消費者に売る場合、一般用加工食品としての表示を行う必要があるのは中間業者だと言っています。

乱暴に訳すと「業務用として流通しているものを、そのまま勝手に消費者に売るなよ」ということです。

また、次のようなQ&Aもあります。

(加工-251)詰め合わせ商品、個包装集合体のもので、個包装に表示した場合、商品外装パッケージにも表示する必要がありますか。必要がある場合、表示方法を教えてください。また、反対に、個包装に表示せずに商品外装パッケージのみに表示することも可能ですか。

(答)
個々の商品に表示を行っていた場合であっても、商品外装パッケージにも別途表示を行う必要があります。ただし、透明の袋等を透して個々の商品の表示を認識できる場合であれば、商品外装パッケージにあえて表示を行う必要はありません。また、販売方法が詰め合わせの形態に限られ、商品ごとにばら売りされることがない場合は、商品外装パッケージに表示を行っていれば、個々の商品に表示を行う必要はありません。ただし、販売者によって、ばら売りされることが想定されている場合は、想定されている商品全てに表示を行う必要があります。想定していなかった商品が販売者によってばら売りされる場合には、販売者に表示義務が生じます。

引用元:食品表示基準Q&A

このQ&Aでは、まさにバラ売りが想定されていない商品に関する「販売者の表示義務」について触れられています。

これらに照らすと、ラベルレスボトルの場合においても、実際にバラで販売する人に表示責任が発生するものと筆者は認識しています。とりわけ、段ボール等に「バラ売り」に関する注意書きがなされている場合は、販売者側の責任の度合いが、より高まるものと思われます。

実際に、「爽健美茶」「アクエリアス」のラベルレスボトルの段ボール箱には、次のように書かれていました。

ケース内のペットボトルにはラベルや表示がありませんので下記内容に注意して取り扱いをお願いします。
ペットボトル製品はこのケースで保管してください。
ペットボトル製品単独での譲渡には十分にご注意ください

前者については、購入者本人はともかく、「同居のご家族が、箱無しのボトル単体だと何が何だか分からなくなってしまう」ようなケースを想定した注意喚起だと思います。

後者の注意喚起は、まさに譲渡について触れています

アレルギーとか法的な問題とかを色々ひっくるめた表現なんだろうと思います。

(もっとも、この書き方で本当に「十分に注意」できるのは、よほど頭が回る人か、自分のような食品表示の関係者だけのような気がしないでもないですが。)

段ボール表示の問題点と改善案(販売サイド)

送り状で表示が隠れてしまう問題

今度は購入者サイドではなく、メーカーや通販業者を含めた販売サイドの問題点についてです。

ここまででも何度か触れてきましたが、ラベルレスボトルの段ボール表示の問題点。

それは「食品表示や注意喚起表示が、送り状や荷札で隠れてしまうこと」です。

注文を受けた飲料を通販業者が「自社配達」するのは稀で、ほとんどが「宅配業者」を利用してお客さんの元に届けています。

その場合、荷物を送る際にお届け先などを記入する紙、つまり「送り状」を貼ることになります。

送り状を貼るのは一般的に段ボールの上面で、食品表示や注意喚起表示が書かれているのも段ボールの上面ということもあって、筆者が購入したラベルレスボトル3箱は全て「送り状によって食品表示が半分隠れた状態」になっていました。

うち2箱はそれなりに上手く剥がすことが出来ましたが、1箱(アクエリアス)は散々な状態になってしまいました。

消費者の手元に渡る段階で、「食品表示が隠れている」、さらに「剥がす際に文字が消える恐れもある」というのは、義務表示を満たしていると言っていいのか、疑問と言えば疑問です。

もちろん、このような状態はメーカーにとっては本意ではないと思いますが、かといって通販業者だけのせいにするのも違うように思います。第一に表示責任があるのも、基本的に食品表示に詳しいのもメーカー側だと考えられるからです。

この問題はおそらく、全国規模の物流網を持っており、「メーカー⇒販売業者」へは宅配業者ではなく自社のグループ企業で輸送している大手メーカーほど気づきにくいと思います。

「小規模の企業」ではあればそもそも宅配業者を利用します。

大手でも「製造会社」が配送していれば食品表示担当者が気づくでしょう。

ただし、販売や輸送に特化した機能を持つ「販売会社」が分社化されていたりすると、その後の表示内容までは気が回らないこともあろうと思います。


さて、問題点だけを連ねても芸がありませんので、改善案を3つほど考えてみました

改善案① 通販業者への周知

まず、実効性はともかくとして、「通販業者への周知」です。

直取引ではなく帳合問屋・商社を挟んでいる場合の実効性には疑問がありますが、いずれにしても、周知自体は必要なことだと思われます。

なお、もしこのページをご覧になっている通販業者の方がいらっしゃいましたら、送り状を貼る位置について、ご留意いただければと思います。

改善案② 側面にも表示

改善案②は、大事な内容については「上面と側面の2ヶ所に書いてしまう」という方法です。

必ずしもスマートな方法と言えるかどうかは分かりませんが、義務表示が隠れてしまうという事態はほぼ避けることができるでしょう。

実際に、アサヒ飲料さんの十六茶では、上面と側面の2ヶ所に食品表示が書かれていました

側面にも食品表示があるため、上面の食品表示が送り状で隠れてしまっても、問題にはなりません。

なお、「ケース販売専用商品・お店で開封しないでください」といった「注意喚起表示」に関しては、下面を除く5面全てに記載してあり、万全を期しているようでした。

改善案③ 送り状を貼るスペースを設ける

最後に、これが最も推奨したい方法ですが、いっそ「送り状を貼るスペースを設けてしまう」という改善案です。

送り状+αくらいの大きさの長方形スペースを枠線で囲って、真ん中に「ここに送り状を貼ってください」等と書いておくイメージです。

メーカーの食品表示担当者やパッケージデザイナーの方は、普段はもっとずっと小さいパッケージの限られた面積の中に、「法改正によってどんどん肥大化していく食品表示」を何とかして詰め込む作業に苦慮しているでしょうから、それを思えば段ボール箱なんてものは余白だらけですので、スペースを作れないということはないと思います。

もともと、飲料を含む食品メーカーは、「運送業者や販売店」向けの注意喚起は段ボール箱に表示し、「エンドユーザー」に向けたアピールや注意喚起は個別のパッケージに表示していました。

「運送業者や販売店」向けは「どちらの面を上にして輸送・保管して欲しいか」など、「エンドユーザー」向けは「開封後は早めに召し上がってほしい旨」などです。

それが、ラベルレスボトルにおいては、「運送業者」「販売店」「エンドユーザー」の3者に対する注意喚起を、段ボール箱に一体として表示する必要があります。

であれば、「送り状が貼られることを初めから想定した商品設計」が必要になってくるものと思われます。

改善案まとめ

以上を踏まえ、また各メーカーの実際の表示を見てきたうえで、筆者が理想的だと思う「ラベルレスボトル外装の表示方法」は、「送り状スペースを設けたうえで、2面以上に表示」することです。

送り状スペースに関しては前述のとおりです。

2面以上に表示することを推奨する理由は、送り状の問題に加え、「流通形態」の問題があります。

一般的な商品の場合、外装である段ボールが中身を守る役割を果たすのに対して、ラベルレスボトルの場合は、その段ボール自体に表示がなされています。

段ボールは、輸送途中で一部が潰れたり穴が開いたりして、文字が読めなくなることが往々にしてあります。1ヶ所のみの表示では、商品が消費者のもとに届くまでに食品表示が消えてしまうリスクが充分考えられます。


さて、ここまで食品表示が隠れているのが問題であると散々述べてきましたが、実際に問題に発展するケースは多くはないとも思ってはいます。(どこかの国なら訴訟案件になりそうではありますが。)

そもそも、どんな商品か分かったうえでネットで買う人がほとんどだろうと思います。

また、QRコード等ではなく現物に物理的な表示をすることが必要な理由の一つにデジタルディバイドの問題がありますが、ラベルレスボトルの購入者はそもそもが(一部カタログ通販を除き)ネット通販の利用者が主でしょう。

大手飲料メーカーの商品であれば、アレルギーや原材料の情報は公式サイトを含めてネット検索で簡単に手に入ります。

とはいっても、ネットが使えない同居のご家族がいたり、更にその方がアレルギーを持っていたり、というケースは十分にあり得ます。

多くの人にとっては、もしかしたら邪魔でしかない情報であっても、このような安全性に関わるケースに備えるのが食品表示の重要な役割と言えるはずです。

ケース販売専用商品はペットボトル以外にも拡大するのか?

「中身の表示を省略したケース販売専用商品」を作ること。

それはペットボトル以外でも可能です。

むしろ、資源有効利用促進法の制約が少ない分、より簡単にできると思います。

とはいえ、ペットボトルは「中身を入れる容器」と「表示をおこなうラベル」が別物だったため、ラベルレス化の意義がありました。

それに対して、「飲料缶」や「パッケージ袋」では容器そのものに表示を印刷しています。

ですので、あえて缶や袋への印刷を廃止して段ボールに表示をおこなうメリットに乏しく、むしろアイテム数が増え管理コストが上がるデメリットのほうが大きいため、そうそう拡大はしないと考えられます。

考えられるとしたら、ペットボトルのように「容器」と「表示ラベル」が分かれているタイプの商品です。

例えば、大手メーカーのお菓子がカラフルなパッケージに入っているのに対して、地場メーカーの商品やお土産物のお菓子は、透明の袋にシールが貼ってあったりもします
※コストを抑えて印刷パッケージ袋を作ろうと思うと、最低でも一度に数万枚は作る必要があり、小規模メーカーには大きな負担になります。

袋の表に商品名シールを1枚、裏に食品表示シールを1枚。
それがケース10入りだとすると、合計で20枚のシールを貼る手間が発生します。

その手間が省けるメリットがありますので、ケース販売専用品が拡大する可能性はあるかと思います。

もし今ここを見ていて、本体の表示を廃したケース販売専用品の開発を検討しているメーカーの方がいましたら、前述の「送り状で表示が隠れてしまう問題」等ご留意いただければと思います。

おわりに

誤解のないよう念のため補足させていただくと、筆者は決してラベルレスボトル否定派の人間ではございません。

むしろ大賛成している程で、消費者の一人として利用させてもらっています。

賛成しているからこそ、なにかしらの問題が発生してラベルレス化の流れに支障をきたす事態にはなって欲しくないと願っています。

繰り返しになりますが、以下の点にはくれぐれもご注意いただければと思います。

・ケース販売専用商品のため、バラで販売したり不特定または多数に譲渡したりしない
・メーカー側は「送り状が貼られた状態で消費者の元に届くこと」についてご留意を。

ここまで読んでいたいて、ありがとうございました。

ラベルレスボトル商品を「種類別・メーカー別」にまとめたページもありますので、よろしければご覧ください。
関連ページ:ラベルレスボトル一覧【種類別・メーカー別】

タイトルとURLをコピーしました