HACCPの勉強におすすめしたい資格「食品安全検定」

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はじめに

2021年6月1日、全ての食品等事業者にHACCPによる衛生管理の実施が義務付けられました。

それにあたって、まずお伝えしておくことは、第三者認証の取得は必須ではなく、実施者の資格取得も必須ではない、ということです。

とはいえ、私自身がチームリーダーとしてHACCPの構築を経験した際は、なんからの指針となるものが欲しいと思ったものでした。その際に、自主的に調べて受験したのが食品安全検定という資格試験でした。

一般に言われているHACCPの関連資格としては「HACCP普及指導員、HACCPリーダー、HACCP管理者」といったものが挙げられますが、これらは「高額な受講料、単位の取得、実務経験や資格維持費」など、個人的にはハードルとなる部分がありました。

メーカーや飲食店を含めた食品業界は数多くの中小・零細企業で成り立っていますが、このコロナ禍の下、時間も費用もかけられない中でHACCP義務化を迎える方が大勢いらっしゃると思います。

このページは、HACCPのコンサルティングや他社への監査の仕事をされる方ではなく、あくまで自社での構築・管理を検討している方に向けて書いています。

ですので、このページのタイトルも「HACCPにおすすめ」ではなく「HACCPの勉強におすすめ」としています。

特に次のような方は是非読んでいただければと思います。

  1. 食品安全について総合的に学びたい
  2. TOEICや英検・漢検・簿記検定などのように、受験資格が無く、現実的な受験料で、純粋に知識や実力を測れる試験を探している
  3. HACCPチームリーダーの方で、メンバーの知識レベルを確認したい、知識の底上げをしたい

自分ひとりであれば、前述の研修等への参加によって、意識次第で十分な知識の習得も可能かと思います。

ただ、HACCPは基本的にチームでおこなうもので、例えば食中毒菌に関する最低限の知識を共有していないと、メンバー同士のミーティング等も機能しないと考えられます。

そのため、3で挙げた「メンバーの知識の確認」は重要な課題のひとつです。

その指標として、「試験内容・受験料・受験の仕組みの単純さ」等をふまえると、食品安全検定が最適だと考えています。

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食品安全検定の概要

食品安全検定には、初級と中級があり、上級試験は現在準備中の扱いとなっています。

初級試験

第15回 食品安全検定・初級試験(2021年9試験)の基本情報です。

受験資格不要
試験会場全国280か所(全都道府県)
受検料6,600円(税込)
実施⽇程2021年9月1日(水)~9月30日(木)
※毎年4回実施(3月、6月、9月、12月)
※期間中は複数回受験可(受験料はその都度かかる)
受験申込
受付(個人)
2021年7月12日(月)~9月27日(月)
問題数
試験時間
50問、60分
実施方法
出題形式
CBT方式 (Computer Based Testing)
択一問題
合格基準70点以上(100点満点)
合格発表即日(その場で合否が分かる)
※ただし、合格証の発送は翌月
※「食品安全検定 公式サイト」の内容を再編集したものです。
※最新の情報は公式サイトをご確認ください。

中級試験

第16回 食品安全検定・中級試験(2021年9試験)の基本情報です。

受験資格不要
試験会場全国280か所(全都道府県)
受検料8,800円(税込)
実施⽇程2021年9月1日(水)~9月30日(木)
※毎年4回実施(3月、6月、9月、12月)
※期間中は複数回受験可(受験料はその都度かかる)
受験申込
受付(個人)
2021年7月12日(月)~9月27日(月)
問題数
試験時間
50問、90分
実施方法
出題形式
CBT方式 (Computer Based Testing)
択一問題、正誤問題、事例問題
合格基準80点以上(100点満点)
合格発表即日(その場で合否が分かる)
※ただし、合格証の発送は翌月
※「食品安全検定 公式サイト」の内容を再編集したものです。
※最新の情報は公式サイトをご確認ください。

上級試験

上級試験は現在準備中の扱いとなっています。

上級試験に関しては、次のような情報が公開されています。

《上級試験の受験資格》

◎ 中級検定試験に合格していること。
◎ 一般衛生管理、HACCPを理解し、特に危害分析の活用と見直しが可能なこと。

《試験方法》
◎ 年に1回。択一式試験と記述式試験の組み合わせによる。
◎ 記述式について会場方式かCBT方式(ワープロ入力能力が必須)かについては検討中。

《試験の内容》
食品安全検定中級で習得した知識を現場でどう活用するかを問う内容とする。
◎ 不具合事例について原因を分析する問題。
◎ フローダイアグラムに基づいて一般衛生管理、CCPを考える問題。

新型コロナウイルスへの対応を優先しておりましたが、2020年10月に実施した運営委員会では、合格者のフォローアップ等について次のようなことが確認されました。

◎ 上級の資格は更新制とし、年1回食品安全の最新動向に関するWeb講習会を実施し、講習会聴講後、レポート提出していただく。
◎ 合わせて、上級資格者同士のコミュニケーションの場を提供する。
◎ 試験問題の作成にあたっては、一般衛生管理やHACCPの知見を有する組織との連係も含め検討を行う。

引用元:上級検定試験の検討状況について(ご報告)
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食品安全検定がHACCPの勉強におすすめの理由

理由①:HACCPの構築・運営経験をもとに開発された検定

食品安全検定は、そもそもHACCPシステムやFSSC/ISO22000(食品安全マネジメントシステム)の構築・運用で培った経験や知識をもとに開発されたものです。

そのため、HACCPの実施において、その前提となる食品安全に関する知識を体系的に習得するのにうってつけの内容となっています。受験した私自身も役立つ内容だと感じました。

ただし、2015年3月に中級検定からスタートした歴史の浅い試験のため、現状、食品業界での知名度はほとんどありません。

なお、食品関連試験によくある「資格ビジネスではないのか」、という疑問を持つ方もいるかもしれません。食品に関する資格は、そのようなものが乱立している現状がありますので、むしろ懸念を抱くべきで、それが正しいスタンスだと思います。

食品安全検定に関しては、そのような試験にありがちな母体が不明ということもなく、試験内容についても食品安全に関する科学的知識や問題解決能力を測るものとなっています。
(少なくとも、「あの添加物がヤバイ」、「××予防に効く食材はコレ」といった内容ではありません)

この点につきましては、運営組織過去問の一部等を確認の上、ご自身でご判断いただければと思います。

理由②:食中毒の事例問題がある(中級)

食品安全検定中級例Q5

出典:食品安全検定 公式ホームページ>資料ダウンロード>食品安全検定(中級)模擬試験問題(PDF)
https://fs-kentei.jp/file-download/

食品安全検定試験の最大の特徴は、上のような食中毒を題材とした事例問題が出ることです(中級のみ)。

この問題については、「過熱調理後、食品が長時間常温で保管された」という記述がウェルシュ菌の増殖する条件に合致し、本文中の状況とも矛盾はないため、「正解は④」になります。

HACCPの肝は、「手順6(原則1)の ハザード分析(危害要因の分析)」と、「手順7(原則2)の 重要管理点の決定」です。

HACCPの名称そのものが、

  • ハザード分析(HA:Hazard Analysis)
  • 重要管理点(CCP: Critical Control Point)

から来ています。

ハザードの種類は多岐に渡り(後述)、製品ごと・製造工程ごとに検討する必要がありますが、多くの製品で最重要となるケースが多いのが食中毒菌です。

食品安全検定・中級の事例問題において、原因食材や汚染経路、食中毒が発生した原因と、その予防対策を考えることは、「食中毒に関するハザード分析」そのものであり、その経験がHACCPの構築時に役立つことは間違いありません。

理由③:食品安全について網羅的・体系的に学べるテキスト

食品表示検定中級テキスト

ハザード分析とは、製造工程ごとにどのような危害要因が潜んでいるのかを考えることです。

その考慮・検討すべきハザードの範囲は、前述した食中毒菌やウイルスをはじめ、自然毒・寄生虫、農薬・添加物・化学物質、アレルゲン、硬質異物など多岐に渡ります。

私の場合は、もともと食品表示の業務を専門にしていましたので(上級食品表示診断士)、食品添加物やアレルギーについての知識・経験は持っていました。

しかし、微生物や寄生虫による食中毒に関しては自信を持って語れるレベルには無く、自然毒に至ってはフグや毒キノコが思い浮かぶ程度の一般的な知識しかありませんでした。

私は初級を飛ばして中級を受験したのですが、食品安全検定・中級の勉強を通じて食品安全全般への理解と関心が深まったと実感しています。

食品安全検定・中級のテキストは、試験対策用のテキストとしてだけでなく、「ハザード(危害要因)の辞書代わり」としても活用できる内容だと思います。私自身、合格した今でもテキストを読み直す機会が度々あります。

飲食店の勤務経験がある方など、「食品衛生責任者」の養成講習を受けた方も多いと思います。

その「食品衛生責任者養成講習会テキスト」を、より発展させた内容が詳細に書かれているのが「食品安全検定・中級テキスト」というイメージで、ほぼ間違いないと思います。
※ただし、各地方自治体の条例等はカバーしていません。


理由②で挙げた「食中毒の事例問題」があるのは中級試験のため、特におすすめしたいのは中級試験です。

興味があれば、次のページも読んでいってください。
関連ページ:【合格者が語る】食品安全検定・中級の勉強方法
関連ページ:「食品安全検定・中級」の合格率とメリット・食品業界での評価について

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