腸炎ビブリオ食中毒の特徴と事例一覧

和名腸炎ビブリオ
学名Vibrio parahaemolyticus
特徴●かつては細菌性食中毒の半数を占め、
発生数、患者数ともに第1位だった。
●海水中にすみ、塩分を好み、真水に弱い。
●魚介類に付着してくる。
●夏季から秋口の、海水温が20℃以上になるときに多発。
●増殖温度:10~42℃(至適温度:35~37℃)
潜伏期間10~24時間(平均12時間)
症状激しい下痢、激しい腹痛、
発熱(38℃前後)、嘔吐、頭痛
汚染源沿岸部の海水中、海泥中
原因食品●近海産魚介類の刺身や寿司
(アジ、サバ、タコ、アオヤギなど)
●二次汚染でキュウリもみなど。
発症菌量10万個以上
予防ポイント・食中毒菌を「付けない」「増やさない」「やっつける」が、
食中毒防止の原則です。
・腸炎ビブリオでは、特に次のことに注意が必要です。

●魚介類を真水で洗う。
●魚介類の調理に使用した器具は、よく洗浄消毒して二次感染を防ぐ。
●加熱する。
●冷蔵する。
<参考文献>
食品安全委員会, 2012年1月, 食品健康影響評価のためのリスクプロファイル~生鮮魚介類における腸炎ビブリオ~
・一般社団法人東京都食品衛生協会, 食品衛生責任者教本‐東京都福祉保健局監修‐ 第37版
・公益社団法人神奈川県食品衛生協会, 食品衛生責任者テキスト 第8版
一色賢司 (監修)/ 一般社団法人食品安全検定協会 (編集), 食品安全検定テキスト 中級 第2版

「食品安全検定 中級」は、HACCPや食中毒の事例問題等が出題される試験です。
関連ページ:「食品安全検定・中級」の合格率や評価、メリット
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腸炎ビブリオ食中毒の発生状況

年次推移(発生件数/患者数/死者数)

年\項目件数(件)患者数(人)死者数(人)
2010年36579
2011年987
2012年9124
2013年9164
2014年647
2015年3224
2016年12240
2017年797
2018年22222
2019年
出典:『食中毒統計資料 |厚生労働省』のデータを当サイトで加工編集
年\項目件数(件)患者数(人)死者数(人)
直近10年平均11.3178.40.0
直近5年平均8.8156.60.0

直近10年で腸炎ビブリオ食中毒による死者は報告されていません。

かつては細菌性食中毒のおよそ半数を占めていました。1980年代後半からは減少傾向でしたが、1992年より再び急増に転じ、1998年は839件もの腸炎ビブリオ食中毒が報告される第2のピークの年となりました。近年はまた減少傾向にあります。

月別状況(発生件数/患者数)

月別発生件数(件)

月\年5年平均2015年2016年2017年2018年2019年
1月0.42
2月0.0
3月0.0
4月0.0
5月0.0
6月0.0
7月0.42
8月3.01635
9月4.612317
10月0.21
11月0.0
12月0.21

月別患者数(人)

月\年5年平均2015年2016年2017年2018年2019年
1月0.42
2月0.0
3月0.0
4月0.0
5月0.0
6月0.0
7月4.020
8月69.2481617760
9月48.445719162
10月0.21
11月0.0
12月34.4172

腸炎ビブリオ食中毒は海水温が20℃以上になるときに多発するため、発生数には明確な季節性があり、夏場の8月9月頃に集中しています。ただし、2015年には12月に患者数100名を超える大規模事件な食中毒事件が発生しています(後述)。

海外(アメリカ)での発生状況

アメリカ疾病予防管理センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)は、腸炎ビブリオがアメリカ国内で年間8万人の感染者と1000人の死者を発生させていると推定しています。

ほとんどの感染症は、水温が高い5月から10月に発生し、生または加熱が不十分なシーフードを摂取することによる食中毒のほか、傷口を海水にさらすことで感染するとして、警鐘を鳴らしています。

二枚貝においては、次の点に注意して調理することで予防のヒントになるとしています。

・調理前の段階で殻が開いている貝は捨てる。
・水から茹でる場合は、殻が開くまで茹で、さらに3〜5分茹で続ける。
・沸騰してから貝を入れる場合は、4〜9分間茹でる。
・調理中に開く貝だけを食べる。調理後に完全に開かない貝は捨てる。

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腸炎ビブリオ食中毒の事例

以下に掲載する事例は、『食中毒統計資料 |厚生労働省』で公表されている食中毒事例より、「病因物質が腸炎ビブリオの事例」を抜粋して掲載したものです。

食中毒事例(2019年)

※2019年は、腸炎ビブリオを病因物質とする食中毒は報告されていません。

食中毒事例(2018年)

2018年の腸炎ビブリオ食中毒について
  • 2018年は、計22件の腸炎ビブリオ食中毒が発生し、うち10件は原因食品として「寿司」が報告されています
発生月日発生場所原因施設摂食
者数
患者
死者
原因食品
08月12日神奈川県飲食店28170平成30年8月12日(日)に提供された食事
08月27日千葉県飲食店18110ちらし寿司
08月31日東京都飲食店12708月31日に当該施設が提供した寿司
08月31日神奈川県飲食店520平成30年8月30日(木)及び9月3日(月)に提供した食事
08月31日神奈川県飲食店27230生うに及びその他のすし(8月29日から9月2日の間に提供)
09月01日埼玉県飲食店1270寿司
09月01日東京都飲食店33160原因施設で調理し提供した寿司
09月01日東京都飲食店658140当該施設が調理し、提供した寿司
09月01日東京都飲食店660平成30年8月31日から9月2日に調理提供した食事
09月01日東京都飲食店1590不明(平成30年8月31、9月2日および3日に提供した食品)
09月01日神奈川県飲食店31150生うに(8月31日から9月3日の間に提供)
09月01日神奈川県飲食店28150平成30年8月31日、9月1日及び9月2日に提供した食事
09月02日埼玉県飲食店1780平成30年9月1日及び2日に提供した寿司(うに)
09月02日東京都飲食店17120不明(寿司)
09月02日東京都飲食店1450不明(寿司)
09月02日東京都飲食店63290当該施設が調理し、提供した寿司
09月02日東京都飲食店33150平成30年9月1日から3日に当該施設で調理・提供された食事
09月02日東京都飲食店30120不明(平成30年9月1日から9月3日にかけて当該施設が調理・提供した食事(すし)
09月02日東京都飲食店2109月1日に当該飲食店が提供した寿司
09月02日神奈川県飲食店840不明(9月1日に当該施設が調理提供した食事)
09月03日東京都飲食店不明409月2日(日)及び9月3日(月)に当該飲食店が調理し、販売した寿司
09月03日東京都飲食店12100平成30年9月2日に当該施設で調理提供された食品

食中毒事例(2017年)

発生月日発生場所原因施設摂食
者数
患者
死者
原因食品
08月13日新潟県飲食店143600平成29年8月13日及び14日に原因施設が提供した食事
08月20日島根県飲食店25130不明(当該施設が8月20日に提供した食事)
08月28日和歌山県飲食店640幕の内弁当
09月02日岩手県販売店121109/1に加工販売した刺身(マグロの中落ち)
09月03日和歌山県飲食店1070コース料理(昼食)
09月26日佐賀県家庭410不明(9月25日の夕食)
10月03日鳥取県家庭410しらすの刺身

食中毒事例(2016年)

発生月日発生場所原因施設摂食
者数
患者
死者
原因食品
01月01日国内不明不明不明10不明
01月01日国内不明不明不明10不明
07月21日埼玉県仕出屋25190平成28年7月20日に調理、提供された食品
07月24日国内不明不明310不明
08月07日神奈川県飲食店126260不明(8月6日提供の夕食:和定食)
08月08日東京都飲食店720調理提供した出前寿司
08月09日静岡県販売店30210刺身等
08月21日千葉県旅館540420不明(8/21に当該飲食店で提供された夕食)
08月23日東京都飲食店117180タコとわかめの酢味噌かけ
08月23日東京都飲食店216520タコとわかめの酢味噌かけ
09月03日石川県旅館588520不明(9月2日の夕食)
09月10日東京都飲食店650当該施設で調理し提供された食事

食中毒事例(2015年)

2015年の腸炎ビブリオ食中毒について
  • 2015年は、12月の北海道において、持ち帰り用の寿司を原因食品とする大規模な腸炎ビブリオ食中毒が報告されています(患者数172名)。
発生月日発生場所原因施設摂食
者数
患者
死者
原因食品
08月30日兵庫県飲食店80480会食(仕出し弁当)
09月29日東京都飲食店1840焼きサンマ
12月31日北海道飲食店13771720平成27年12月31日に当該飲食店が提供した食事(持ち帰り用の寿司
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