キャビアの種類と模造品(偽物)・類似品の一覧

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キャビアの基礎知識

キャビアの概要

キャビアはチョウザメの卵で、トリュフ、フォアグラとともに世界三大珍味に数えられる高級食材です。

関連ページ:トリュフの種類と加工品

ヨーロッパにおいては広義には魚卵全般をキャビアと呼びますが、日本においてキャビアと言った場合には一般にチョウザメの卵のことを指しますので、以降、単にキャビアと書いた場合はチョウザメの卵のことだとお考えください。

チョウザメとは?

チョウザメ(英語:sturgeon / スタージョン)は、鮫によく似た魚で、背中に連なる堅い鱗が羽を広げた蝶のように見えることから、チョウ(蝶)ザメ(鮫)という名がついています。

鮫に似ているのは外見だけで、全く系統の異なる古代魚に分類される魚で、鮫のような牙もありません。一部の種を除いて比較的凶暴性も低く、甲殻類や貝類を吸い込んで食べています。

種によって、遡河魚、つまり鮭のように海に出てから川を遡上するものと、一生を川や湖で過ごす淡水魚がいます。

世界最大の湖カスピ海が主産地として有名です。カスピ海に面する国は、ロシア、アゼルバイジャン、イラン、トルクメニスタン、カザフスタンの5か国です。カスピ海は海ではなく湖で、チョウザメも鮫ではないので、ややこしいですね。

しかしながら、カスピ海の天然チョウザメは乱獲や密猟によって生息数が激減してしまいました。そのため、チョウザメ類の一部は捕獲制限とともに、ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)により国際取引にも厳しい制限がかかりました。

現在では捕獲や国際取引が条件付きで一部再開してはいますが、中国やヨーロッパ、日本を含めた世界各地でチョウザメの養殖が盛んにおこなわれるようになっており、養殖したチョウザメのキャビアが広く流通しています。

チョウザメ類は、卵がキャビアとして愛されるほか、一部の種では魚肉も皇帝献上品にされるなど珍重されてきた歴史があり、また、うきぶくろのコラーゲンから作られたゼラチン(アイシングラス)は、ビールの濁りを取り除く清澄剤として利用されてきました。

低温殺菌処理の有無について

キャビアは、加熱処理の有無によって2種類に大別されます。

もし何度がキャビアを召し上がったことがあって、食感に大きな違いを感じたことがあるとしたら、それは後述するキャビアの種類の違いではなく、低温殺菌処理の有無の違いかもしれません。

フレッシュ

低温殺菌をせずに、そのまま塩漬けしたキャビアをフレッシュ・キャビア(fresh caviar)と言います。しっとり滑らかでクリーミーな舌触りがありますが、賞味期限が1ヶ月も無く、流通が難しいキャビアです。

パストライズ

約60度で低温殺菌してから塩漬けにしたキャビアを、パストライズ・キャビア、またはパストライズド・キャビア(pasteurized caviar)と言います。長期保存が可能になりますが、低温とはいえタンパク質の凝固が始まる温度ですので、フレッシュの滑らかさは失われてプチプチとした食感になります。

キャビアの楽しみ方

キャビアの楽しみ方としては、何も加えずに、ただスプーンに乗せてキャビアそのものを楽しむのが通と言われます。

その際に用いるスプーンは、一般的なシルバーよりも化学変化を起こしづらい純金スプーンが良いとされていますが、なかなか現実的ではないかと思います。
キャビア専用のスプーンとして、シェルスプーン(貝殻スプーン)や、先端に金メッキを施したスプーンも販売されています。

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キャビアの種類(カスピ海の3大キャビア)

ベルーガ

ベルーガは世界最大のチョウザメであるオオチョウザメのこと、またはその卵のことを言います。
大粒のキャビアで、皮は薄く、柔らかな味わいが特徴です。極めて流通量が少なく、稀少なキャビアです。

オシェトラ

オシェトラはロシアチョウザメまたはシップチョウザメのこと、またはその卵のことを言います。中粒のキャビアで、ナッツのような深いコクのある味わいと形容されます。

セブルーガ

セブルーガは、比較的小型のチョウザメであるホシチョウザメのこと、またはその卵のことを言います。小粒のキャビアですが、味はベルーガに似ていると言われます。

キャビアの種類粒の大きさ棲息数
ベルーガ大粒極めて少ない
オシェトラ中粒少ない
セブルーガ小粒比較的多い

粒の大きさはベルーガ、オシェトラ、セブルーガの順、棲息数はその逆になっています。棲息数が少ないということは、稀少性が高く、当然ながら価格も高くなります。

伝統的に、狭義のキャビアは、カスピ海に生息する野生のチョウザメの卵である、この「ベルーガ、オシェトラ、セブルーガ」のみを指す場合があります。

現在でも、「ベルーガ、オシェトラ、セブルーガ」以外はキャビアとは認めないという人もいるようです。

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キャビアの種類(様々なチョウザメのキャビア)

スターレット

スターレットは、コチョウザメ(カワリチョウザメとも呼ばれます)のキャビアです。前述のオオチョウザメらと同様にカスピ海に生息しますが、数が少なく、珍重されます。

バエリ

バエリは、シベリアの原産のシベリアチョウザメのキャビアです。シベリアチョウザメは養殖が可能で、かつ比較的大型で、しかも生育が早いことから、ヨーロッパにおいて盛んに養殖がおこなわれているほか、後述する交配種にも利用されます。

ナカーリ

ナカーリは、アドリア海原産のアドリアチョウザメのキャビアです。海水域に生息するチョウザメです。

アムール

アムールは、アムール川原産のアムールチョウザメのキャビアです。アムール川は、ロシアと中国の国境を成し、オホーツク海に注ぐ川です。中国が養殖に成功しています。

カルーガ

カルーガは、アムール川原産のダウリアチョウザメのキャビアです。ベルーガ(オオチョウザメ)と同じくダウリアチョウザメ属に属す大型のチョウザメで、ベルーガの代替品として期待されています。アムールと同じく中国が養殖に成功しています。

シロチョウザメのキャビア

シロチョウザメは、ホワイトスタージョンとも呼ばれるチョウザメで、アメリカ原産ですが生息数は減少しており、現在では世界的に養殖がおこなわれている種です。

ハックルバックキャビア

今まで紹介したチョウザメの分類としては、大型のチョウザメであるベルーガとカルーガはダウリアチョウザメ属に、その他はチョウザメ属に属すチョウザメです。

このハックルバックキャビアは、それらとは別の属、シャベルノーズスタージョン属に属すシャベルノーズスタージョンというチョウザメのキャビアです。ハックルバックは現地での呼び名だそうです。

ハイブリッドキャビア

交雑種のキャビアはハイブリッドキャビアと呼ばれます。ロシア×シベリア、アドリア×シベリア、アムール×カルーガなどのチョウザメからキャビアが作られています。

ベステルチョウザメのキャビア

ベステルチョウザメは、オオチョウザメのメスと、コチョウザメのオスを掛け合わせたハイブリットの一種ですが、繁殖を経て一つの種として認識されており、日本においても盛んに養殖がおこなわれている種です。大型魚ですので飼うのは容易ではありませんが、設備さえ揃えられるのであれば一般家庭での飼育も可能です。

アルビノ・キャビア

チョウザメのアルビノ個体(メラニン欠乏による白化個体)から採取されるキャビアです。魚体だけでなく、卵も黒色を失い薄い黄色のキャビアになり、ゴールデンキャビアとも呼ばれ珍重されています。コチョウザメのアルビノ個体が極めて高い価格で流通しています。

ヘラチョウザメのキャビア(パドルフィッシュキャビア)

単にキャビアとして紹介するのも、後述するイミテーション(模造品)として紹介するのも、どちらも憚られるため、ヘラチョウザメのキャビアとして独立した項目を設けて説明します。

ヘラチョウザメは英語でパドルフィッシュとも呼ばれ、アメリカのミシシッピー川水域に分布します。

このヘラチョウザメは、チョウザメとは「科」が違います。

ちょうどヒラメ(カレイ目ヒラメ科)とカレイ(カレイ目カレイ科)ほどの違いになります。

● チョウザメ目 チョウザメ科 ダウリアチョウザメ属
  ・ダウリアチョウザメ(カルーガ)
  ・オオチョウザメ(ベルーガ)

● チョウザメ目 チョウザメ科 チョウザメ属
  ・ロシアチョウザメ(オシェトラ)
  ・ホシチョウザメ(セブルーガ)
  ・コチョウザメ(スターレット)等

● チョウザメ目 チョウザメ科 シャベルノーズスタージョン属
  ・シャベルノーズスタージョン等

● チョウザメ目 ヘラチョウザメ科 ヘラチョウザメ属
  ・ヘラチョウザメ

一般的に日本でキャビアというとチョウザメの卵を指しますが、それにヘラチョウザメの卵を含むかどうかは議論のあるところです。民間レベルで物議を醸し、いわば炎上した例はありますが、現状では、法的にはグレーなラインというところでしょうか。単にキャビアとして販売しているケースもあるようです。もっといえば、貴重な天然キャビアのようなキャッチコピーで、前述した養殖チョウザメのキャビアよりも良いもののように販売されるケースもあります。

言うまでもありませんが、あくまで販売方法の問題であって、パドルフィッシュキャビア自体が悪いものでは無いですし、これを販売すること自体も悪いことではありません。

言い換えれば、ヘラチョウザメを単にチョウザメの一種としてではなく、その違いを説明した上で販売しているショップは、良心的なショップと言えると思います。

キャビア模造品(イミテーションキャビア)

チョウザメ類以外の魚卵から、あるいは魚肉などのタンパク質を成形したものから、様々なキャビア模造品(イミテーションキャビア)が作られています。
イカ墨や着色料などで色を付け、キャビアのような黒色を作り出しているものが多く、クラッカー等の食材に乗せると、その黒色が移るものもあります。

決してこれら自体が悪いものではありませんが、これらは明らかにキャビアではないものですので、キャビアと称して販売や提供をおこなうと、景品表示法上問題となります。ヘラチョウザメのキャビアと違って、グレーですらありません。
平成23年と平成25年には、後述するランプフィッシュの卵をキャビアと称して販売、提供した事業者が、消費者庁より景品表示法の規定に基づく措置命令を受けています。

ランプフィッシュキャビア

ランプフィッシュキャビアは、ランプフィッシュという魚の卵をキャビアのように黒く着色した、イミテーションキャビアです。

ランプフィッシュは、チョウザメの仲間でもなければ、ランプから連想するチョウチンアンコウとも関係はなく、カサゴ目(カサゴもく)の魚です。

イミテーションキャビアの中では流通量も多く、評価も高いものです。1瓶で数百円と、学生でも手を出せる価格で購入できるものが多いです。おススメの食べ方としては、安さを活かして贅沢にキャビア丼風にしてしまうのはいかがでしょうか。塩気が強いので白米に良く合いますし、SNS映えも間違いなし(?)。

カペリンのキャビア

カペリンは樺太ししゃものことで、樺太ししゃもの卵を使ったイミテーションキャビアがカペリンのキャビアです。ししゃもの卵ですので、一粒がとても小さいです。ランプフィッシュキャビアより更に安く、業務スーパーで購入できます。

アブルーガ

アブルーガ(Avruga)は、スペインのPESCAVIAR社が販売するイミテーションキャビアで、一般名ではなく商品名です。燻製ニシンに食塩とレモン汁を加え、コーンスターチを繋ぎとして成形し、粒状にしたものです。

ニシンの卵というとカズノコですが、これはカズノコを着色したものではなく、ニシンの魚肉を使っています。燻製の風味とさっぱりとしたレモン果汁の相性がとてもよく、また臭みもなく、キャビアとは別物ですが個人的には非常に美味だと思っています。

人工キャビア

人工イクラのように、アルギン酸を用いて作られるキャビア風の食品です。
人工イクラは、理科の実験で作ったことがある方も多いのではないでしょうか。
日本においては、青森県のキャビアンヌという商品がテレビで取り上げられ、有名になりました。

番外編:キャビアと名のつくもの

キャビアという名称がキャビアに似た料理の婉曲表現として使用されたり、ヨーロッパにおいて広義には魚卵全般をキャビアと呼んだりすることから、キャビア以外にキャビアと名のつく食品が存在しますので、最後に番外編として挙げていきます。

関連ページ:魚卵の種類一覧(食用)

レッドキャビア

レッドキャビアは、鱒(マス)の卵のことで、フレンチキャビアとも呼ばれます。

鱒の卵は、日本でも「マスコ」や「鱒イクラ」等の呼び名で流通していますね。前述の通りヨーロッパにおいては広義には魚卵全般をキャビアと呼びますが、日本ではあまり馴染みがないかと思います。

これは前述のイミテーションキャビアと違って、黒く着色したりしてチョウザメのキャビアを模したものではありません。

赤い魚卵のままで流通し、レッドキャビアとして認識されているものです。

カレスキャビア

カレスキャビア(KALLES KAVIAR)は、スウェーデンのヨーテボリに本社のあるAbba Seafood社が出しているチューブ式の容器に入った魚卵ペーストです。パンや卵に塗って食べるそうです。北欧でキャビアと言うと魚卵全般を指すことも多く、この商品もチョウザメの卵ではなく、タラコが使われています。

グリーンキャビア

グリーンキャビアと呼ばれるのは「海ぶどう」です。この「海ぶどう」も別名で、和名をクビレズタと言います。

その見た目とプチプチとした食感から、ぶどうやキャビアに例えられる沖縄県の名産品です。

ハタハタキャビア

ハタハタキャビアは、秋田県の(株)鈴木水産さんの登録商標で、同社が販売する商品です。「和のキャビア」のキャッチコピーが付けられています。

ハタハタの卵のことを秋田県では「ぶりこ」と呼びますが、ハタハタキャビアはこの「ぶりこ」を使って作られています。

原材料は【ハタハタ卵(秋田県産)、しょっつる、食塩、りんご】とシンプル。

原材料に使われている「しょっつる」は秋田県の伝統的な調味料(魚醤)で、これもハタハタから作られるものです。

しょっつるの色が本体の色にも影響しているくらいで、前述のイミテーションキャビアのように黒く着色する成分を使っている訳ではないことや、あくまで「ぶりこ」の加工品であることを推していることから、キャビア模造品のカテゴリではなく、こちらで紹介しました。

ホワイトキャビア

ホワイトキャビアは、エスカルゴの卵のことで、エスカルゴキャビアやエスカルゴパールとも呼ばれます。日本においては、業務ルートはともかく、少なくとも一般には流通していないと思われ、筆者もお目にかかったことはないのですが、本家キャビアに負けず劣らずの高級食材で美味のようです。

これも、チョウザメのキャビアを模して黒くしたものではありません。

畑のキャビア

畑のキャビアと呼ばれるのは、「とんぶり」です。とんぷりは秋田の名産品でホウキグサの果実。その見た目とプチプチとした食感から畑のキャビアと呼ばれます。

キャビアチョコレート

渋谷に本店「ミュゼ ドゥ ショコラ テオブロマ」を構える(有)テオブロマさんが販売されている、キャビアのような粒状のチョコレートです。
チョウザメのイラストのパッケージも可愛らしく、贈り物にも喜ばれそうです。

テキサスキャビア

テキサスキャビアは、カウボーイキャビアとも呼ばれるテキサス生まれのサラダで、黒目豆(ブラックアイドピー)のサラダです。黒目豆は目のような黒い斑点が有る豆で、この黒い斑点をキャビアに見立てたことが名前の由来ですが、本物の高価なキャビアと比較して皮肉交じりにテキサスキャビアと呼んだことが最初のきっかけだそうです。

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