「マカダミアナッツ」は、オーストラリア原産のヤマモガシ科マカダミア属の常緑樹「マカダミア・インテグリフォリア」や「マカダミア・テトラフィラ」の木の実です。
「マカデミアナッツ」と呼ばれることもあります。また、オーストラリアのクイーンズランド州で発見されたことから、「クイーンズランドナッツ」の別名もあります。
アーモンドやクルミ等とともに日本でもメジャーなナッツの一つとして認識されていますが、原料価格はそれらの倍以上にもなります。
※関連ページ:ナッツの種類一覧【木の実】
マカダミアの木は通常、接ぎ木によって繁殖し、商業的な量のナッツが収穫できるようになるまで、約7年から10年を要します。これが、マカダミアナッツが高価なナッツである主な理由です。
また、マカダミアナッツは、世界一とも言われるほどの極めて硬い殻で覆われ、更にその外側が繊維質で覆われています。
収穫までの期間の長さに加えて、殻むき加工に手間がかかることや、主産地であるオーストラリアの人件費の高さも手伝って、ナッツの中でも特に高級品として取引されています。
マカダミアナッツは乳白色で美しく、楕円や扁平形ではなく、球形の「丸いナッツ」です。
噛むのに強い力が必要なほど硬くはありませんが、かといってクルミのように簡単に崩れるようなものではなく、コリっとした適度な歯応えが特徴で、味は淡白ながら円やかで上品な甘みがあります。
塩や油を使わずにそのままロースト(素焼き)するだけでも、美味しく食べることができます。一般には、素焼きの他、適量の塩を加えたものや、製菓材料としても出回っています。
マカダミアナッツの生産量と産地について
マカダミアナッツは、原産地であるオーストラリアの他、ハワイやアフリカ等で生産されていますが、他の地域での生産量は限られており、アーモンド等と異なり「国際連合食糧農業機関(FAO)」による継続した国際的な統計はとられていません。(ピーカンナッツ等とともに「その他のナッツ」として集計されています。)
上図は、Australian Macadamia Society(オーストラリア・マカダミア協会)が作成した、マカダミアナッツ生産量の直近5年推移グラフです。オーストラリアと他国を区別して集計・予測されています。
年次 | 世界 | オースト ラリア | 他国 |
---|---|---|---|
2016年 | 191,000 | 48,600 | 142,400 |
2017年 | 186,000 | 43,000 | 143,000 |
2018年 | 221,000 | 49,300 | 171,700 |
2019年 | 228,547 | 43,500 | 185,047 |
2020年 予測値 | 228,428 | 42,000 | 186,428 |
オーストラリアにおけるマカダミアナッツ生産量は横ばいから微減の傾向ながら、他国での生産量が伸びており、世界全体では増加傾向にあります。
グラフでは、オーストラリアの2020年の生産量(42,000トン)は予測値として示されていますが、その後の発表では46,900トンを記録し、当初の予測を上回ったことが示されています。これは、2019年の干ばつの影響から予想よりも早く回復したことが理由のようです。
オーストラリア
マカダミアナッツの原産地はオーストラリアのクイーンズランド州で、先住民族であるアボリジニが好み、長く食してきたとされています。
注目されたきっかけは、1850年代、ヨーロッパの植物学者がクイーンズランド州の東海岸にある亜熱帯森でマカダミアの木を発⾒したことです。その後、大規模な商業生産が行われることになりますが、野生の木に関してはその80%が失われ、現在では絶滅の危機に瀕しています。
マカダミア属には10以上の種があり、そのうち主に商業生産されているのはインテグリフォリア種(学名:Macadamia integrifolia)、テトラフィラ種(学名:Macadamia tetraphylla)の2種です。その2種や、それらのハイブリッドによる様々な品種が開発されています。
インテグリフォリア種の栽培はクイーンズランド州と、その南に隣接するニューサウスウェールズ州の北部が主となっています。
マカダミアの成木は軽い霜に耐える程度の耐寒性を有しますが、幼樹が生育するには最低でも10℃以上が必要で、25℃が最適温度とされています。
テトラフィラ種はタスマニア州のような比較的気温の低い地域においても生育可能な種です。
オーストラリアは、1990年代、アメリカ(ハワイ)を逆転して世界一のマカダミアナッツの生産国となりました。しかしながら、2012年よりその座を南アフリカ共和国に明け渡しています。
アメリカ(ハワイ)
ハワイでは、マカダミアナッツチョコレートが定番土産としての地位を確立しています。
それもあって、日本でも「マカダミアナッツと言えばハワイ」というイメージを持っている方も多いと思います。
マカダミアがハワイに導入されたのは、1880年代で、じつは「防⾵林」として移植されたのがきっかけでした。
その後、ハワイ⼤学での品種改良を経て1930年頃より商業生産が始まりました。前述のインテグリフォリア種とテトラフィラ種のハイブリッド品種が大規模生産されており、ハワイの代表的な農産品の一つとなっています。他国との比較においても、1990年代にオーストラリアに逆転されるまで長く世界1位の生産量を誇っていました。
南アフリカ
南アフリカ共和国は、近年マカダミアナッツの生産が急拡大している国です。2012年にはオーストラリアを抜き、生産量世界一となっています。オーストラリアの農家が南アフリカに土地を買ってマカダミアナッツを育てているケースもあるようです。
南アフリカ国内でのマカダミアナッツ消費量はあまり多くなく、ほとんどが輸出に回されています。輸出地域にはEUや米国に加え日本も含まれますが、最大の輸出国は中国です。特に、殻付きの状態で流通するマカダミアナッツの輸出先は、ほぼ中国が占めている状態です。
アフリカの農業というと、生産者に利益が回らない貧困問題が話題になることがあります。その点、マカダミアナッツは、そもそもナッツ自体の価格が高いことに加え、中国需要にも支えられ価格の下落も起きていません。また、マカダミアナッツ栽培が比較的新しい産業で農家が強い力を持つことができている点が大きく、既存の農業産業と比較しても十分な利益を確保できるとして、現地での人気産業となっています。
ケニア
東アフリカに位置するケニアにおけるマカダミアナッツ栽培の歴史は古く、現在もマカダミアナッツ主産地の一つとなっています。
なかでも、1974年に日本人の佐藤芳之氏が創業した「ケニア・ナッツ・カンパニー」は世界5大マカダミアナッツ・カンパニーの一つとされています。
同氏は、1990年代に「ケニア・ナッツ・カンパニー」を社員数4000人を超える大企業へと成長させました。その後、2008年に一株だけ残して会社を現地パートナーに譲渡し、同じくアフリカのルワンダにて新たな事業を展開されているそうです。
日本
農林水産省の生産出荷実績調査によれば、1992年(平成4年)、鹿児島県にて「1トン」の国産マカダミアナッツが収穫された記録が残っています。
それ以降の収獲は記録されていないため、日本でマカダミアナッツの生産が商業レベルで成功しているとは言えません。ただ、気候等から判断して栽培自体は可能ですので、1トンに満たない量の収獲、あるいは個人レベルでの栽培は現在もあるものと考えられます。
日本のマカダミアナッツの輸入量(国別)
表:日本のマカダミアナッツ輸入量(単位:トン)
※日本ナッツ協会輸入統計掲載データを食品データ館で再編集
年\国名 | 合計 | オースト ラリア | 南アフリカ | ケニア | マラウィ | グアテマラ | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2006年 | 2,160 | 1,383 | 325 | 87 | 309 | 54 | 55 |
2007年 | 1,688 | 912 | 341 | 0 | 366 | 68 | 69 |
2008年 | 2,136 | 1,307 | 378 | 0 | 345 | 105 | 105 |
2009年 | 2,502 | 1,494 | 548 | 0 | 256 | 163 | 204 |
2010年 | 2,348 | 1,338 | 448 | 0 | 412 | 145 | 150 |
2011年 | 2,317 | 1,217 | 580 | 0 | 384 | 120 | 135 |
2012年 | 2,566 | 1,405 | 517 | 0 | 397 | 228 | 246 |
2013年 | 2,574 | 1,469 | 403 | 62 | 479 | 154 | 162 |
2014年 | 2,319 | 1,326 | 249 | 176 | 387 | 181 | 181 |
2015年 | 2,264 | 1,163 | 345 | 115 | 405 | 200 | 237 |
2016年 | 2,606 | 1,664 | 292 | 187 | 310 | 145 | 153 |
2017年 | 2,243 | 1,524 | 180 | 225 | 232 | 64 | 81 |
2018年 | 2,627 | 1,653 | 289 | 200 | 383 | 68 | 102 |
2019年 | 3,161 | 2,179 | 346 | 296 | 194 | 107 | 147 |
日本のマカダミアナッツ輸入量は、年ごとの多少のブレはあるものの、全体として右肩上がりで推移しています。
日本のマカダミアナッツ輸入量は、マカダミアナッツの原産地オーストラリアからの輸入が約7割を占めています(2019年)。
輸入量2位から4位には、南アフリカ共和国、ケニア、マラウイとアフリカの国々が続いています。アフリカ産のマカダミアナッツは、日本においては主に製菓材料などの業務用原料として流通しており、ナッツ単体の状態でそのまま出回ることは多くありません(一般には、チョコレート菓子などに加工された状態で出回っています)。
輸入量5位は中米に位置するグアテマラがつけています。
なお、主要産地の一つであるハワイについては、生産量こそ多いものの、そのぶん土産としての需要を含めた島内での消費量も多いこともあり、日本への輸出はほとんどありません。
マカダミアナッツのカロリー・栄養成分
マカダミアナッツ(素焼き)のカロリーや栄養成分は以下の通りです。
※USDA:Agricultural Resarch Service掲載データ(Nuts, macadamia nuts, dry roasted, without salt added)を食品データ館で再編集
カロリー・栄養成分基本項目
成分名 | 値 | 単位 |
---|---|---|
エネルギー | 718 | kcal |
たんぱく質 | 7.8 | g |
脂質 | 76.1 | g |
コレステロール | 0.0 | mg |
炭水化物 | 13.4 | g |
-糖類 | 5.4 | g |
-糖質 | 4.1 | g |
-食物繊維 | 8.0 | g |
食塩相当量 | 0.0 | g |
水分・ミネラル
成分名 | 値 | 単位 |
---|---|---|
水分 | 1.6 | g |
灰分 | 1.1 | g |
カルシウム | 70.0 | mg |
鉄 | 2.7 | mg |
マグネシウム | 118.0 | mg |
リン | 198.0 | mg |
カリウム | 363.0 | mg |
亜鉛 | 1.3 | mg |
銅 | 0.6 | mg |
マンガン | 3.0 | mg |
セレン | 11.7 | µg |
ビタミン
成分名 | 値 | 単位 |
---|---|---|
ビタミンA | 0.0 | µg |
ビタミンB1 | 0.7 | mg |
ビタミンB2 | 0.1 | mg |
ナイアシン | 2.3 | mg |
パントテン酸 | 0.6 | mg |
ビタミンB6 | 0.4 | mg |
ビタミンB12 | 0.0 | µg |
ビタミンC | 0.7 | mg |
ビタミンD | 0.0 | µg |
ビタミンE | 0.6 | mg |
ビタミンK | 0.0 | µg |
葉酸 | 10.0 | µg |
ナッツの食物アレルギーについて
日本では、クルミ・アーモンド・カシューナッツがアレルギー物質に指定されていますが、マカダミアナッツは指定されていません(2020年時点)。
ですが、平成30年の調査では、アレルギーの即時型症例の原因食物として、鶏卵・牛乳・小麦に次ぐ第4位に「木の実類」が入っています。
※「平成30年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書(消費者庁の委託を受け独立行政法人国立病院機構相模原病院が実施)」より
この調査において、特定原材料等(=アレルゲン表示義務品目+表示推奨品目)としてカバーされていない食物の中では、アーモンド 21 例(全体に占める割合 0.4%)が最も多く、マカダミアナッツはそれに続く15例(同 0.3%)でした。
その後、アーモンドが「特定原材料に準ずるもの(表示推奨品目)」に追加されましたので、現時点では、アレルギー物質に指定されていない食物の中で、マカダミアナッツが最も症例数の多い食物となっています。
また、ナッツアレルギーには交差反応があると言われています。
つまり、ある種類のナッツでアレルギー反応が認められる場合、他のナッツ類でもアレルギー反応が起きるリスクがあるということです。
木の実ではありませんが、「落花生(ピーナッツ)」もナッツ類と交差反応性を持つことが報告されています。
米国やEUにおいては、アレルギー物質として個々のナッツを指定するのではなく、「ツリーナッツ」や「ナッツ類」といった分類で「包括的に指定」しているほどです。
ナッツアレルギーは、少量の摂取でも重篤な症状を発する場合があることでも知られています。
アレルギー患者の方、特に他のナッツにアレルギーを持つ方が初めてマカダミアナッツを食べようとする場合には、事前に医師の診断を仰ぐことを強く推奨いたします。
医師の診断により、アレルギー反応を示すナッツが特定され、マカダミアナッツを食べても問題ないことが分かった場合においては、殻付きナッツを選択することが望ましいかもしれません。
現地加工であればともかく、日本のナッツ加工メーカーはマカダミアナッツ専業ではなく、他のナッツや落花生等の加工製造もおこなうのが一般的です。その結果、製造ラインで意図しない微量の混入(コンタミネーション)が起こる可能性があるからです。
なお、前述のとおり、マカダミアナッツの殻は世界一とも言われる硬さを有していますので、利用する場合には専用の殻割り器が必要になります。
素焼きマカダミアナッツ
「素焼きのナッツ」とは、ナッツをそのまま焼いたものです。調味料や添加物はもちろん塩や油も使わない製法で、ナッツ本来の美味しさを味わえる、筆者が最もおすすめする食べ方です。
どこで買える?(素焼きマカダミアナッツ)
素焼きのマカダミアナッツは、ナッツ専門店や高級スーパー等で販売されています。また、高価なナッツですが、最近では一般的なスーパーでの扱いも増えてきました。
なお、ネット通販でも1年を通して取り扱われています。
高価なナッツですが、キロ単位での販売の他、100gや60gといった試しやすいサイズでも販売されていますので、ぜひマカダミアナッツの持つ円やかで上品な甘みを堪能してみてください。
マカダミアナッツの加工品
マカダミアナッツチョコレート
マカダミアナッツの加工品と言えば、なんといってもマカダミアナッツをチョコレートで包んだ、「マカダミナッツチョコレート」です。
マカデミアナッツチョコレートTIKI
「マカデミアナッツチョコレートTIKI」は、日系三世のマモル・タキタニ氏が創業された「Hawaiian Host(ハワイアンホースト)社」のロングセラー製品です。
ハワイにおいて定番土産としての地位を確立しており、今や世界中で愛されているマカダミアナッツ製品です。ハワイに縁のある方なら、一度はこのパッケージを目にしたことがあるのではないでしょうか。
マカダミアチョコレート(明治/ロッテ)
日本の製菓メーカーからもマカダミアナッツチョコレートが販売されています。日本でマカダミアナッツと言えば、明治さんやロッテさんの製品を連想する方も多いのではないでしょうか。「明治マカダミアチョコレート」は、1976年に発売され、40年以上の歴史を誇るロングセラー商品となっています。
マカダミアナッツオイル
※マカダミアナッツオイルは「トリートメントオイル」としても利用されていますが、ここで紹介するのは「食用のオイル」です。
マカダミアナッツオイルは、オメガ7(パルミトレイン酸)を豊富に含むオイルで、酸化に強い特徴があります。
日清 マカダミアナッツオイル(145g)
「日清 マカダミアナッツオイル」は、日清オイリオさんが販売するオイルで、原材料に食用マカダミアナッツオイル以外のものは入っていません。酸化を防げるうえ、一滴ずつ調整して注げて便利な「フレッシュキープボトル」が採用されています。
ニダフジャパン マカデミアナッツオイル(1kg)
マカダミアナッツの輸入を手掛ける「ニダフジャパン」さんより、業務用規格のマカダミアナッツオイルが市販されています。こちらも、原材料に食用マカダミアナッツオイル以外のものは入っていません。
マカダミアナッツおかき(岩塚製菓/新潟味のれん本舗)
米菓メーカーの岩塚製菓さん、その子会社の新潟味のれん本舗さんより、マカダミアナッツ入りの「おかき」が販売されています。マカダミアナッツの香りを引き立てる、あっさりした塩味のシンプルな味付けがなされています。
マカダミアミルク飲料
「アーモンドミルク」の市場は日本で拡大しており各社がこぞって発売していますが、キッコーマン飲料株式会社さんからは「マカダミアミルク」の製品も出ています。
「オリジナル」と「砂糖不使用タイプ」のバリエーションがあります。また、豆乳飲料にマカダミアナッツペーストを加えた製品も販売されています。
あとがき
マカダミアナッツは、まろやかで上品な甘みを持つオーストラリア原産のナッツで、ナッツの中でも高級品として扱われています。
既に一般にも普及しているナッツですが、世界の生産量、日本の輸入量ともに増えてきており、今後より一層メジャーな存在になっていくかもしれません。
高価なナッツですが、前述のとおり60gといった小袋の商品がネット通販でも販売されていますので、是非試してみてください。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
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【参考文献・参考サイト】
・https://www.maff.go.jp/ (農林水産省)
・https://australianmacadamias.org/ (Australian Macadamia Society)
・http://www.jna-nut.org/ (日本ナッツ協会)
・https://www.usda.gov/ (USDA: United States Department of Agriculture)
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