コーラナッツ(Kola nut)は、主に西アフリカの熱帯雨林で自生または栽培される、アオイ科コラ属の常緑樹コラノキの種子です。
その名のとおり、コーラナッツは「飲料のコーラ」と深い関係があります。
1880年代に、ジョージア州の薬剤師ジョン・ペンバートン氏が、コーラナッツから抽出したカフェイン等を使って発明した飲み物こそ、世界初のコーラ飲料と言われている、あのコカ・コーラです。
コカ・コーラのレシピは企業秘密として厳重に守られていることで有名ですが、現在では少なくともコーラナッツ抽出物は含んでおらず、その代わりとして人工的にそれを再現した香料が使用されているようです。
また、日本のスーパーやコンビニ等で一般に販売されるコーラ飲料にも、コーラナッツの抽出物は含まれていません。
現在では、本物のコーラナッツ抽出物を使ったコーラは希少な存在になっており、下のリンクのように、「コーラナッツを使用していること」それ自体が差別化されて売られています。
コーラナッツの生産量と産地について
コーラナッツの産地は、アフリカの中でも西アフリカが主となっています。
順位 | 国または地域 | 生産量(t) | シェア(構成比) |
---|---|---|---|
– | 世界 | 306,415 | – |
1位 | ナイジェリア | 161,135 | 52.6% |
2位 | コートジボワール | 60,066 | 19.6% |
3位 | カメルーン | 50,518 | 16.5% |
4位 | ガーナ | 25,303 | 8.3% |
5位 | シエラレオネ | 8,773 | 2.9% |
6位 | ベナン | 620 | 0.2% |
FAO(国際連合食糧農業機関)による統計では、1位は世界シェア52.6%のナイジェリアで、コートジボワール、カメルーンと続いています(2019年)。
※ただし、特にアフリカの場合、集計に反映されない国や地域の生産も相当量あると考えられます。なお、種子が人の手によって持ち運ばれ、中南米のブラジルやジャマイカで栽培されている例も一部であるようです。
年次 | 世界 | ナイジェリア | コートジボワール | カメルーン | ガーナ | シエラレオネ | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1961年 | 191,500 | 139,000 | 37,000 | 5,000 | 5,000 | 5,000 | 500 |
1962年 | 193,500 | 141,000 | 37,000 | 5,000 | 5,000 | 5,000 | 500 |
1963年 | 197,500 | 145,000 | 37,000 | 5,000 | 5,000 | 5,000 | 500 |
1964年 | 210,500 | 158,000 | 37,000 | 5,000 | 5,000 | 5,000 | 500 |
1965年 | 206,606 | 154,000 | 37,000 | 5,106 | 5,000 | 5,000 | 500 |
1966年 | 213,640 | 157,000 | 40,000 | 6,140 | 5,000 | 5,000 | 500 |
1967年 | 227,500 | 162,000 | 40,000 | 8,000 | 12,000 | 5,000 | 500 |
1968年 | 247,500 | 167,000 | 60,000 | 10,000 | 5,000 | 5,000 | 500 |
1969年 | 253,829 | 171,000 | 60,000 | 12,329 | 5,000 | 5,000 | 500 |
1970年 | 212,188 | 125,000 | 60,000 | 15,688 | 5,000 | 5,000 | 1,500 |
1971年 | 217,778 | 125,000 | 60,000 | 22,026 | 5,000 | 5,000 | 752 |
1972年 | 198,739 | 125,000 | 40,000 | 22,900 | 5,000 | 5,000 | 839 |
1973年 | 205,009 | 125,000 | 45,000 | 24,700 | 5,000 | 5,000 | 309 |
1974年 | 218,500 | 125,000 | 59,000 | 24,000 | 5,000 | 5,000 | 500 |
1975年 | 220,500 | 125,000 | 59,000 | 25,000 | 5,000 | 5,000 | 1,500 |
1976年 | 208,000 | 127,000 | 44,000 | 25,500 | 5,000 | 6,000 | 500 |
1977年 | 216,000 | 129,000 | 48,000 | 26,000 | 5,000 | 6,000 | 2,000 |
1978年 | 226,500 | 131,000 | 57,000 | 27,000 | 5,000 | 6,000 | 500 |
1979年 | 227,000 | 133,000 | 55,000 | 27,500 | 5,000 | 6,000 | 500 |
1980年 | 232,500 | 135,000 | 58,000 | 28,000 | 5,000 | 6,000 | 500 |
1981年 | 238,100 | 137,000 | 61,000 | 28,600 | 5,000 | 6,000 | 500 |
1982年 | 254,700 | 140,000 | 74,000 | 29,200 | 5,000 | 6,000 | 500 |
1983年 | 256,900 | 155,000 | 60,000 | 29,600 | 5,000 | 6,800 | 500 |
1984年 | 264,610 | 170,000 | 52,600 | 30,100 | 6,000 | 5,400 | 510 |
1985年 | 270,300 | 172,000 | 55,000 | 30,300 | 7,000 | 5,500 | 500 |
1986年 | 278,119 | 174,000 | 60,519 | 31,000 | 7,500 | 4,600 | 500 |
1987年 | 275,898 | 174,000 | 57,298 | 32,000 | 8,000 | 4,100 | 500 |
1988年 | 245,973 | 145,000 | 53,873 | 33,000 | 10,000 | 3,600 | 500 |
1989年 | 235,822 | 140,000 | 47,722 | 33,000 | 11,000 | 3,600 | 500 |
1990年 | 241,524 | 135,000 | 56,636 | 33,600 | 12,000 | 3,700 | 588 |
1991年 | 266,784 | 165,000 | 51,601 | 34,000 | 11,935 | 3,700 | 548 |
1992年 | 242,003 | 138,100 | 53,407 | 34,448 | 14,000 | 1,500 | 548 |
1993年 | 255,284 | 153,100 | 47,636 | 35,000 | 15,000 | 4,000 | 548 |
1994年 | 214,295 | 105,000 | 55,693 | 35,111 | 14,000 | 3,943 | 548 |
1995年 | 198,036 | 95,000 | 48,595 | 35,081 | 14,680 | 4,129 | 551 |
1996年 | 195,477 | 85,000 | 55,693 | 35,200 | 15,000 | 4,031 | 553 |
1997年 | 213,806 | 82,000 | 75,020 | 35,400 | 16,449 | 4,383 | 554 |
1998年 | 228,399 | 84,651 | 83,137 | 35,600 | 20,000 | 4,456 | 555 |
1999年 | 217,606 | 82,674 | 75,027 | 35,800 | 18,825 | 4,723 | 557 |
2000年 | 218,003 | 82,000 | 75,020 | 36,000 | 19,425 | 5,000 | 558 |
2001年 | 219,002 | 82,000 | 75,020 | 36,439 | 19,490 | 5,500 | 553 |
2002年 | 220,432 | 85,000 | 72,571 | 36,811 | 19,700 | 5,800 | 550 |
2003年 | 206,135 | 85,000 | 57,637 | 37,084 | 19,859 | 6,000 | 555 |
2004年 | 217,029 | 88,000 | 65,216 | 37,000 | 20,055 | 6,200 | 558 |
2005年 | 223,147 | 85,250 | 73,792 | 37,031 | 20,124 | 6,400 | 550 |
2006年 | 213,290 | 85,500 | 64,524 | 36,000 | 20,197 | 6,500 | 569 |
2007年 | 231,347 | 100,000 | 65,617 | 37,960 | 20,500 | 6,700 | 570 |
2008年 | 253,162 | 120,000 | 66,450 | 39,093 | 20,199 | 6,800 | 620 |
2009年 | 296,037 | 162,080 | 66,729 | 39,824 | 19,805 | 7,000 | 599 |
2010年 | 280,308 | 144,950 | 67,009 | 40,592 | 19,929 | 7,231 | 597 |
2011年 | 278,231 | 138,000 | 66,701 | 41,385 | 24,000 | 7,545 | 600 |
2012年 | 275,864 | 135,000 | 62,146 | 46,500 | 24,149 | 7,469 | 600 |
2013年 | 269,180 | 132,000 | 58,160 | 47,711 | 23,062 | 7,647 | 600 |
2014年 | 304,915 | 167,686 | 56,672 | 49,197 | 22,741 | 8,016 | 603 |
2015年 | 319,695 | 177,011 | 63,228 | 46,462 | 24,094 | 8,292 | 608 |
2016年 | 298,819 | 156,582 | 61,404 | 47,690 | 24,255 | 8,276 | 612 |
2017年 | 301,565 | 158,427 | 60,851 | 48,633 | 24,604 | 8,436 | 614 |
2018年 | 303,734 | 159,560 | 60,417 | 49,576 | 24,953 | 8,611 | 617 |
2019年 | 306,415 | 161,135 | 60,066 | 50,518 | 25,303 | 8,773 | 620 |
コーラナッツの生産量は、増加傾向で推移しています。
カカオ豆(チョコレートの原料)との関係
コラノキは、同じく西アフリカが主産地でチョコレートの原料となる「カカオノキ」の幼樹を日射しから守る「日陰樹(シェイド・ツリー)」として、混植して栽培されるケースも少なくありません。
国または地域 | コーラナッツ生産量 の世界順位 | カカオ豆生産量 の世界順位 |
---|---|---|
ナイジェリア | 1位 | 4位 |
コートジボワール | 2位 | 1位 |
カメルーン | 3位 | 6位 |
ガーナ | 4位 | 2位 |
上の表のとおり、コーラナッツとカカオ豆では、生産量上位国の顔ぶれが似通っています。
※なお、カカオ豆生産量では3位インドネシア、5位エクアドル等、アフリカ以外の国もランクインしています。
【関連ページ】カカオ豆の産地・生産量ランキング【世界】
コーラナッツの特徴や歴史について
コーラナッツは赤みがかった白色のナッツで、ガムのように噛んだり、粉末を煮出して飲んだりして利用されます。
コーラナッツは、イスラム教徒にとって唯一使用を許された刺激物として盛んに取引されてきた歴史があり、西アフリカの人々は、長い間それを興奮剤として噛んできました。現在でも眠気覚まし等のため日常的に用いられる他、婚礼や葬式等の儀式にも欠かせない存在となっています。
現地では、喉の渇きや空腹を抑える効果があると信じられており、これはコーラナッツがカフェインとテオブロミンを含むことによるものと考えられます。カフェインとテオブロミンは、お茶やコーヒー、チョコレートにも含まれる物質です。
ヨーロッパ人がコーラナッツを知ったのは、ポルトガルの船が西アフリカにある海岸(現在のシエラレオネの海岸)に到着した1500年代だと言われています。その後、1620年にイギリスの探検家リチャード・ジョブソンがガンビアでコーラナッツに出会い、19世紀後半にはコーラナッツはトン単位でヨーロッパと米国に出荷されるまでになりました。
そして、1880年代にジョージア州の薬剤師ジョン・ペンバートン氏が、コーラナッツから抽出したカフェイン等を使って発明した飲み物こそ、世界初のコーラ飲料と言われている、あのコカ・コーラです。
参考:BBC,The little-known nut that gave Coca-Cola its name
ナッツの食物アレルギーについて
日本では、クルミ・アーモンド・カシューナッツがアレルギー物質に指定されていますが、コーラナッツは指定されていません(2021年1月時点)。
ただし、ナッツアレルギーには交差反応があると言われています。
つまり、ある種類のナッツでアレルギー反応が認められる場合、他のナッツ類でもアレルギー反応が起きるリスクがあるということです。
木の実ではありませんが、「落花生(ピーナッツ)」もナッツ類と交差反応性を持つことが報告されています。
米国やEUにおいては、アレルギー物質として個々のナッツを指定するのではなく、「ツリーナッツ」や「ナッツ類」といった分類で「包括的に指定」しているほどです。
ナッツアレルギーは、少量の摂取でも重篤な症状を発する場合があることでも知られています。
アレルギー患者の方、特に他のナッツにアレルギーを持つ方が初めてコーラナッツを食べようとする場合には、事前に医師の診断を仰ぐことを強く推奨いたします。
コーラナッツの入手方法
コーラナッツは、ごく一部の輸入食品専門店を除いて、実店舗で入手することは困難ですが、通販ではわずかに取り扱いがあります。形態としては、ホールタイプとパウダータイプがあるようです。
あとがき
コーラナッツは、アフリカ原産のナッツで、ガムのように噛んだり、粉末を煮出して飲んだりして利用されます。
世界初のコーラ飲料コカ・コーラは、もともとはコーラナッツから抽出したカフェイン等を使って発明された飲み物です。
現在では、本物のコーラナッツ抽出物を使ったコーラは希少な存在になっており、下のリンクのように、「コーラナッツを使用していること」それ自体が差別化されて販売されていますので、気になる方は試してみてください。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
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【参考資料について】
ランキング表やグラフ等(個別に出典または引用表記のあるものを除く)は、農林水産省・水産庁・総務省またはFAO(国際連合食糧農業機関)によるデータを再編集または一部加工し、食品データ館が作成したものです。