このページでは、「食品安全検定・中級」を受けようか、受けるべきか迷っている方に向けて、中級試験の概要、難易度、評価、メリットなどについて解説します。
なお、筆者は食品メーカーの品質部門に勤めていて、実際に中級を受験・合格しています。
資格の総合情報サイトのように綺麗にまとまったページではありませんが、それとはまた違った視点(食品メーカー視点、合格者視点)でのメリットや評価に興味のある方は、ぜひ読んでいってください。
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※勉強方法や出題傾向の分析などは、別のページに載せています。
【関連ページ】【合格者が語る】食品安全検定・中級の勉強方法
こういった情報は既にご存じ、という方はスキップしてください。
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中級試験の基本情報
第16回 食品安全検定・中級試験(2021年9試験)の基本情報です。
受験資格 | 不要 |
試験会場 | 全国280か所(全都道府県) |
受検料 | 8,800円(税込) |
実施⽇程 | 2021年9月1日(水)~9月30日(木) ※毎年4回実施(3月、6月、9月、12月) ※期間中は複数回受験可(受験料はその都度かかる) |
受験申込 受付(個人) | 2021年7月12日(月)~9月27日(月) |
問題数 試験時間 | 50問、90分 |
実施方法 出題形式 | CBT方式 (Computer Based Testing) 択一問題、正誤問題、事例問題 |
合格基準 | 80点以上(100点満点) |
合格発表 | 即日(その場で合否が分かる) ※ただし、合格証の発送は翌月 |
※最新の情報は公式サイトをご確認ください。
2020年9月までは、春秋開催(3月、9月)でしたが、
2020年12月より、季節開催(3月、6月、9月、12月)に変わっています。
「食品安全検定・中級」の合格率や難易度
回 | 実施時期 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 平均点 |
---|---|---|---|---|---|
累計 | – | 6,395 | 3,173 | 49.6% | 76.2 |
第15回 | 2021年6月 | 326 | 220 | 67.5% | 81.5 |
第14回 | 2021年3月 | 289 | 176 | 60.9% | 80.2 |
第13回 | 2020年12月 | 80 | 44 | 55.0% | 77.3 |
第12回 | 2020年9月 | 499 | 210 | 42.1% | 74.3 |
第11回 | 2020年3月 | 452 | 240 | 53.1% | 77.7 |
第10回 | 2019年9月 | 633 | 297 | 46.9% | 75.9 |
第9回 | 2019年3月 | 674 | 282 | 41.8% | 74.1 |
第8回 | 2018年9月 | 660 | 365 | 55.3% | 78.2 |
第7回 | 2018年3月 | 582 | 222 | 38.1% | 71.9 |
第6回 | 2017年9月 | 506 | 230 | 45.5% | 75.3 |
第5回 | 2017年3月 | 400 | 255 | 63.8% | 80.7 |
第4回 | 2016年9月 | 403 | 146 | 36.2% | 71.5 |
第3回 | 2016年3月 | 289 | 165 | 57.1% | 77.0 |
第2回 | 2015年9月 | 252 | 145 | 57.5% | 78.9 |
第1回 | 2015年3月 | 350 | 176 | 50.3% | 76.3 |
食品安全検定・中級の合格率は、高い回で67.5%、低い回で36.2%、平均49.6%です。
およそ2人に1人が合格できるテストですが、8割以上の正解を取る必要があり、5択の問題が基本でマグレ当たりしにくいため、無対策で勘や運だけで合格できるテストではありません。とはいえ、勉強すれば誰でも合格のチャンスがあるテストと言えるかと思います。
2021年6月試験までの累計で、6,395名が受験し、3,173名が合格しています。
なお、受験資格はありませんので、初級を飛ばして中級から受験することも可能です。
食品安全検定には、現在のところ上級試験がありませんので、中級が最上位の級となっています(2021年9月試験時点)。
※公式サイトの上級検定試験の検討状況について(ご報告)では、検定開始から10周年までに実現できるよう準備を進めることが書かれています。第1回が2015年3月ですので、2024年~2025年頃の実施になるでしょうか。
「食品安全検定・中級」の知名度・評価
「食品安全検定・中級」の知名度は?
2015年にスタートした新しい検定ということもあって、正直なところ「食品安全検定」の現時点での知名度は「ほぼ無いに等しい」というのが、食品業界に身を置く者としての率直な実感です。
もちろん、あくまで現時点での話であって、将来的には分かりませんが。
食品メーカーや飲食チェーン等で「食品安全分野ど真ん中の品質保証や品質管理の仕事」をしている人でも、検定の存在自体を知らない人が多いんじゃないでしょうか。
ですので、就職や転職に役立つかというと、面接時に資格を絡めて上手くアピールできるような方であれば話は別でしょうが、中級に合格したという事実のみで有利とまでは、とても言えないです。
ちなみに、主要な2つの求人検索エンジンにて「”食品安全検定”でフレーズ検索」したところ、片方はHit無し、もう片方のHit数は4件(うち1件は中級が必須条件)でした。(2020年4月)
筆者が受験したきっかけも、特に会社で薦められたからとか、身近に受けた人がいたからとかではなく、おそらくは今このページを読んでいる皆さんの多くと同じように、たまたまネットで見かけたからです。
知名度に関してもう一つ言うと、少なくとも筆者は食品安全検定について「名刺に記載した人」に会ったことはありません。
余談ですが、このサイトの別のページで取り上げている「食品表示検定」に関しては、名刺に「中級食品表示診断士」と記載した人をそれなりに見かけます。
関連ページ:食品表示検定とは?|合格者目線・メーカー目線で解説
なお、詳しくは後述しますが「HACCP(アメリカのNASA発の衛生管理手法)」が、2020年06月より1年間の経過措置期間を経て2021年6月に完全義務化されるというのが、食品業界の一大関心事になっているところです。
食品メーカーや飲食店を含めた食品業界全体で「HACCP」や「衛生管理」、「食品安全」のようなキーワードに注目が集まることが予想されます。
食品安全検定は、公式サイトによれば「HACCPシステムやFSSC/ISO22000(食品安全マネジメントシステム)の構築・運用で培った経験や知識をもとに開発したもの」です。今後HACCPへの関心が高まるのに伴い、もしかしたら食品安全検定の注目度が高まることもあるかもしれません。
「食品安全検定・中級」の評価は?
知名度がないため、業界内での評価を判断するのは難しく、まずは筆者個人の感想になってしまいますが、テキストの内容や試験の内容については役に立つものだと考えています。
筆者の個人的な感覚は別にしても、公式サイトにある運営組織のページを見ると、運営委員会には国立大学の名誉教授や東証一部上場企業の品質部門の管理者といった面々が名を連ねています。
もちろん大学教授や上場企業だから無条件で信頼できるという意味ではありませんが、少なくとも、食に関する民間資格に割とありがちな「運営元がどこの誰だかすら分からない資格商法」のようなものでは無いと、客観的に判断できる材料にはなるのではないでしょうか。
ここまでは、「食品安全検定・中級」の知名度・評価についてでした。
ここからは、「食品安全検定・中級」のメリットについてです。
食品安全検定・中級のメリット
食品安全について網羅的・体系的に学べる
さて、対外的な知名度や評価について色々と言ってしまいましたが、それでも筆者は食品安全検定の勉強をして良かったと思っています。
理由は、食品安全について網羅的・体系的に学ぶことができたから、ということに尽きます。
筆者は食品表示の業務を専門にしていますので、食品添加物やアレルギーについての知識や経験は持っていました。
しかし、微生物や寄生虫による食中毒に関しては自信を持って語れるレベルには無く、自然毒に至ってはフグや毒キノコが思い浮かぶ程度の一般的な知識しかありませんでした。
現在では食品安全全般への理解と関心が深まり、合格した今でもテキストを読み直す機会が度々ありますし、食品安全検定・上級の区分が新設されたらチャレンジしたいとも思っています。
あとは、飲食店等で働いている方で、「食品衛生責任者」の養成講習を受けた後、講習でせっかく学んだ知識を整理したいとう方にもオススメです。各地方自治体の細かい条例まではカバーしていませんが、食中毒や異物混入など多くの分野が共通していますし、より発展した内容を学べます。
HACCPメンバーの知識の底上げに
ご存じの方も多いと思いますが、2021年6月にはHACCPが義務化されます。
関連ページ:HACCP義務化ってなに?無視するとどうなる?罰則は?
HACCPの最初の手順で、「HACCPチーム」を編成することになります。
チームには、例えば営業部のような、従来は食品衛生に直接関わらなかった部署からもメンバーに入れることが一般的ですが、メンバー間で食品安全の知識に差がありすぎるとHACCPの導入の段階で円滑に進まないことも考えられます。
「チームリーダー」の場合は、必ずしも「中級」の知識だけで十分とまでは言えないとは思いますが、品質部門でない方が「食品安全」について学ぶものとしては十分な内容だと思います。
食品安全検定は、前述のとおり「HACCPシステムやFSSC/ISO22000(食品安全マネジメントシステム)の構築・運用で培った経験や知識をもとに開発したもの」ですので、このようなHACCPチームの知識レベルの底上げや習熟度の確認にとって、うってつけの検定だと考えられます。
テキストは、危害要因(ハザード)の辞書代わりとしても活用できる内容です。
※HACCPと食品安全検定について、詳しくは次のページに記載しています。
関連ページ:HACCPの勉強におすすめしたい資格「食品安全検定」
上級試験(未開催)の受験資格
食品安全検定には、現在のところ上級試験がありませんので、中級が最上位の級となっています(2021年9月試験時点)。
※公式サイトの上級検定試験の検討状況について(ご報告)では、検定開始から10周年までに実現できるよう準備を進めることが書かれています。第1回が2015年3月ですので、2024年~2025年頃の実施になるでしょうか。
検討中の段階ではありますが、上級試験の受験資格として「中級検定試験に合格していること。」と記載されています。※初級、中級には受験資格はありません。
「上級にしか興味ない」という方でも、先行して準備しておいても良いかもしれません。
実生活でのメリット
食品表示検定の食中毒分野の内容は、ただ単に教科書的な知識だけを答えさせようというよりも、むしろ実務的な食中毒の予防や対策にフォーカスしています。
近年、保健所への届け出件数が急増しているアニサキス(寄生虫)を例にとると…
・海産物やイカを食べた人間に感染する。
・一般的な料理で使用する程度の量の酢じめ、塩漬けなどに予防効果は無い。
・冷凍(-20℃、24時間以上)や、加熱調理(中心温度60℃、1分以上)で、死滅する。
・生食する場合は内臓を避け、目でよく見てアニサキス幼虫がいないことを確認する。
(参考)農林水産省ホームページ>アニサキス
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/anisakis.html
上記は農林水産省のサイトを参考に箇条書きにしたものですが、このような普段の生活にも直結した内容を食品安全検定のテキストやアプリで学ぶことができますので、ご家庭で料理をされる方にも役に立つかと思います。
初級試験と中級試験の違い
最後に、初級試験と中級試験の違いについてまとめます。
受験料 | 初級:6,600円(税込)/中級:8,800円(税込) |
公式テキスト | 初級:食品安全検定テキスト 初級 中級:食品安全検定テキスト 中級 |
試験時間 | 初級:60分/中級:90分 ※問題数は50問で同一です。 |
出題形式 | 初級:択一問題/中級:択一問題、正誤問題、事例問題 |
合格基準 | 初級:70点以上(100点満点)/中級:80点以上(100点満点) |
合格率 | 初級:64.1%/中級:48.0% ※2020年試験までの平均 |
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
受けてみようかなと思った方は、勉強方法や問題例についてのページも見てみてください。
関連ページ:【合格者が語る】食品安全検定・中級の勉強方法